営業未経験のスタッフを巻き込みながら「営業の型」・「営業マネジメントの型」を作り上げる
事業再編に伴う構造改革を営業組織まで浸透

株式会社ドコモCS北海道様事例

株式会社ドコモCS北海道様
株式会社ドコモCS北海道様のロゴ

ドコモCS北海道は2014年7月1日にドコモエンジニアリング北海道株式会社とドコモサービス北海道株式会社が合弁してスタート。NTTドコモグループの事業再編に伴い、現場密着型の組織運営を担う組織として誕生しました。会社名のCSには、「お客様に心からご満足いただく(Customer Satisfaction)」「心のこもったお客様サービス(Customer Service)」「安心と信頼の通信サービス(Communication Service)」の3つの意味があり、北海道エリアのお客様への通信サービスの提供・向上に取り組んでいます。

営業の素地がないところからの営業部門を作り上げる

渡部 聡 法人営業部 部長
渡部 聡

渡部 NTTドコモグループでは、モバイル業界が成熟期を迎え、競争環境が激化する状況を見据え全社的に事業再編を推進してきました。1つはdポイントやdマーケットといった「新領域分野の拡大」。もうひとつがモバイル領域における競争力強化としての「法人営業力の強化」です。その中でもドコモCS北海道・法人営業部は事業再編のテーマである「法人営業力の強化」を担っており、120名以上のスタッフで北海道エリアの営業サポート・札幌圏における営業活動を展開しています。当社は2014年にできた新しい会社です。しかも、新会社設立にあたり、大胆な人材のリソースのシフトも行われ、現在の営業チームができた経緯があります。そのため、営業部門出身ではないメンバーも巻き込みながら、新たな営業組織を作り上げなければなりませんでした。

臼井 貴一
法人営業部 法人営業担当 部長
臼井 貴一

臼井 法人営業に求められるお客様との関わり方も市場の成熟に合わせて変わってきました。具体的には「お客様に求められる回線を提供する」役割から、「お客様へ回線を活用したソリューションを提供する」役割へ変化する必要がありました。そのためには営業の意識も行動も変えなければなりません。営業経験が少ないメンバーの中で、営業活動の中身自体も変革していく必要がありました。

渡部 初年度は特に難しい環境で、営業経験が少ないメンバーのため、やり方もバラバラで営業の成果につながっていませんでした。管理者もマネジメントをしにくく、組織として行動することがまだまだできていませんでした。さまざまな解決策を探る中で、外部の力を借りることを検討し富士ゼロックス総合教育研究所(現 パーソル総合研究所)にご相談しました。

ドコモCS北海道様より相談を受け、事前ヒアリングをしてみると「営業の資質がありそうだ」という人もいれば「まだまだ力不足」という人もおり、個々の能力のばらつきが大きい状況でした。しかも、キャリア採用で入社して間もないメンバーや職種転換で、営業未経験者も多い。将来的に組織的な活動に結び付けるためにはチームビルディングは必須だと考えました。
実際に立案したプランとしては、まず個人からチームへと組織力を高めること。さらに、個々の営業活動として営業活動の「量」を増やすことと、「質」を追求することを同期化する計画を立てました。通常、営業経験がないメンバーを短期で育成することは簡単ではないのですが、幸いドコモCS北海道様からロングレンジで関わってほしいという要望があり、1年間通してのトレーニングと現場への反映を繰り返す実践的な計画を練ることができました。

一年間を通したシリーズ型研修

バーチャルチーム方式で研修効果を波及させる

齋藤 寛子 法人営業部 法人営業担当 業務推進担当
齋藤 寛子

齋藤 私が所属する業務推進部門では、今回の営業力強化研修の支援をはじめ、新人研修の計画、サービスやソリューション商材の社内勉強会、その他社内横断プロジェクトチームの構築・運営を行っています。営業力強化研修では、実際の営業チームとは別に横断チームを作ることにより、研修で学んだ内容を実際の営業チームへ波及させやすい仕組みを計画しました。

私自身としては、バーチャル方式はマネジメントの役割が有効に機能しない可能性があるため、はじめは懐疑的な部分がありました。しかし、実際にやってみると、バーチャルチームへの参加メンバーの意欲が非常に高く、きちんと学習内容を自チームへ持って帰り波及させてくれたため効果的だと感じました。
その効果は特に2年目、3年目に営業同行をした際に感じました。初年度のメンバーに選ばれていなかった人も、2期生のメンバーは1期生のノウハウが生かされ、当初のメンバーとはまったく違うレベルからスタートすることができました。以前は新規開拓で30秒も話が持たなかった人が、5分10分と飛び込みのお客様でも会話が持つ。研修を直接受けていないメンバーにも効果が波及していることを十分に確認できました。

研修効果のより一層の定着に向けて

渡部 初年度の研修効果が感じられたため、今年3年目の研修に突入しています。今回の一連の研修には非常に感謝しています。営業成績がついてきていることももちろん素晴らしいのですが、一人ひとりの行動が変わったことを実感できています。研修参加後の1~2年後の人を見ると、本当に立派になっていて自信を持って活動しています。自信は非常に大切だと考えています。自信のある人は次の人にも自信をもって教えられる。将来、ほかの働き方をしたとしても生きる力になっています。今では、研修メンバーが成長したことから、研修に参加していなかった管理職メンバーもやる気になって、いい相乗効果が生まれています。
当社は組織的な特徴として、旧ドコモエンジニアリング・ドコモサービス正社員やドコモ退職者、契約社員、ドコモ出向受入社員などさまざまな人材が入れ替わり、流動性が高いことが挙げられますが、そのような中でも、営業ノウハウやマネジメントノウハウを定常的に高めていくことが目標です。富士ゼロックス総合教育研究所(現 パーソル総合研究所)には組織力をより高めていくことにご協力いただけるよう期待したいと思います。

齋藤 業務推進部門としても効果が波及してきたことを実感しています。「新規開拓」や「成長分野開拓」といった別のテーマをもった横断プロジェクトも行っていますが、メンバーが複層的に関わっており、よいところを持ち寄ることで、うまく組織に浸透するきっかけを作ってくれています。今後人材の入れ替えがあってもノウハウが蓄積される仕組みにつなげていきたいと思います。

臼井 研修から学ぶことも多く、組織運営にも参考にしています。例えば、昨年度まではチームの規模を1チーム3~4人で構成していましたが、今年度からは1チーム9名程度の組織に変更しました。チームビルディングの研修のやり方や規模を参考に、日常業務でのノウハウ共有やディスカッションを通してチームでお客様の課題を解決しやすく、適正な規模になったと思います。
次の課題として認識しているのは、チームリーダーを作ることです。育ってきた個々の営業を引っ張る営業リーダーを作っていくこと。期待したいと思います。

「営業の型」「営業マネジメントの型」を作ることを目指して

阿部 智幸 株式会社NTTドコモ
法人ビジネス本部
法人ビジネス戦略部
事業企画・人材開発担当課長
阿部 智幸

初めは法人営業経験がないまだまだ寄せ集めといった厳しい状況からのスタートでした。当初の営業活動はいきなり飛び込み営業をしてノックだけして断られて帰ってくる状況で、「営業の型」を作ることが大切だと考えていました。1年目、営業に関する研修を内製でもチャレンジしましたが思うような成果は得られず、成果を出すためにはどんな方法が最短か?と考えたときに、外部の営業研修実績のあるところに協力をお願いする方針となりました。すでにお付き合いのある会社も含めいくつかの会社様にお声がけしましたが、ありきたりのプログラムではなく当社の実態に寄り添った提案をいただけたことから富士ゼロックス総合教育研究所(現 パーソル総合研究所)に依頼することになりました。

丸さんのご提案では研修を「自分事にする」がひとつのコンセプトでした。実際の組織ではないバーチャル部門方式で検討を進めていた当社にとっても重要な切り口でした。事務局側としてもせっかくの研修の熱を冷ましてはいけない、価値を下げてはいけないと研修のフォローや情報共有を徹底し、次の研修にどうつなげるかを一緒に考えていきました。市場環境は厳しくなっているので単純に売り上げだけでは一概に成果を判断できませんが、研修に参加したチームでは案件化率や歩留まり率などに大きな改善が見られ、実際の売り上げにも貢献し出しています。
研修担当者自身も他人事ではなく研修を受ける立場の人たちのことを「自分事で考える」ことが重要だと実感しています。研修を選ぶ事務局側が今の現場の課題を自分事に感じ、一体感を持って取り組むことで成果を生む確率を高めることができると思います。今後は3年間かけて体系立てて整理したノウハウを軸に活動を継続し、より高い結果を出すことが目標です。やり方だけに慣れてしまい、成果がおろそかになっては意味がありません。また、営業担当が壁に当たったときにマネージャーがどうサポートするか、難易度の高い案件に当たったときにどう攻略するか、個々の人が育つだけでなく「営業マネジメントの型」ができることも重要だと思います。ドコモCS北海道での成果を生む「営業の型」「営業マネジメントの型」がより普遍的で全国のドコモCS各社や全社への波及効果があると、大変素晴らしい活動になるのではないかと思います。

現場の声

1期生の取り組み:営業の基礎力を高め、営業の活動量を増加させる

最初に着手したのは各バーチャルメンバーへのヒアリングと営業同行でした。1期生で感じていた課題は「営業の個性を磨くこと」「営業の基礎力を高めること」でした。具体的には、事前に訪問先の企業を調べ、面談時に相手の関心事を聞き出す質問をするなどの営業の基礎を磨いていきました。同時に、チームビルディングの研修を行い、各メンバーの信頼関係を作るお手伝いをしました。

八木田 知子 法人営業部 法人営業担当 課長
八木田 知子

八木田 私自身は、営業部門に配属されることも、課長になることも初めてからのスタートでした。会社としての法人営業マニュアルがない状態で、メンバー同士も初顔合わせからのスタートだったことを覚えています。営業部門出身でないメンバー、キャリア採用(転職)メンバーが7割を占めた当時、初めてづくしの状況で、うまくマネージャーとして指導ができるかの悩みもある中、バーチャルチームの1期生に選出され、研修を受けさせていただけることになりました。
実際に研修を受けて、訪問するお客様が業界全体として抱えている課題に対して、どのように解決策を提示するかイメージができるようなりました。さまざまなツールも活用し、狙った業界の課題についてなるべく時間を使わずにそれができるようになり、営業経験がなかった私にとって非常に勉強になり、私自身はもちろん、部下にも実践してもらっています。
今回の研修では、営業素人の比率が高い中で、1年目からできること、実現性の高いことにフォーカスしていただき、メンバーにとっても納得感のある研修メニューであったと思います。せっかくのロングスパンのこの研修を精一杯吸収せねばもったいない。現場に持ち帰って、次の回の研修時には自分たちが成長していなければ、投資してくれた会社にも申し訳ないよね、と、バーチャルチームのメンバーとお互いを鼓舞し合いながら、受講しました。

川村 亜由子 法人営業部 法人営業担当
川村 亜由子

川村 私はキャリア採用であったため、入社当初は社内の人の顔と名前が一致しませんでした。人に聞くことが相手の手間になってしまう恐れもあるためなかなか自分から質問ができませんでした。研修1期生に選ばれ、チームビルディングの研修をしていただいたおかげで、話をしたことがなかったメンバーとも打ち解け、その人その人の個性や得意分野が徐々に理解できるようになりました。実際に、困ったことがあっても誰に聞けばよいか、どう聞けばよいかが分かるようになり、研修以外のリアルな環境であってもうまく質問を伝えられるようになっていきました。私は前職で営業経験自体はあったのですが製品を中心とした営業でした。製品の営業とソリューションの営業ではまったくノウハウが異なると実感しています。それは情報収集力やヒアリング力、想像力の幅がもっともっと必要だと心底感じたからです。今回の研修でソリューション営業としての基礎を高められたと思います。また、営業プロセスを社内で共有することができるようになったので、いくつかの営業プロセスを試し、判断する基準ができたことで上司に報告や相談がしやすくなりました。これも研修で得られたスキルだと思います。
営業のノウハウだけでなく、お客様との距離感やお話の進め方など前向きに向き合えるようになったことも大きな成果です。特に丸先生はマイナスの言葉ではなくいつもプラスの言葉で意欲を掻き立てて下さるので、素直にアドバイスを受け入れることができました。

2期生の取り組み:ターゲットを絞り、営業の質をさらに高める

1期生メンバーは、活動量と質の同期化に焦点を当て、 訪問数・案件数・販売数をモニタリングしました。案件化率(案件数/訪問数)を1期生メンバーとそれ以外で比較したところ明らかに1期生が上まわっていました。また、1期生メンバーには、研修で獲得したノウハウをアウトプットとして残して2期生につなぎ、ターゲティングなども駆使しながら活動の質を高める活動にステップアップして取り組みました。

石崎 嘉亨 法人営業部 法人営業担当 課長
石崎 嘉亨

石崎 私は2期目から参加し、2期目は主査として、3期目は課長として研修に参加しています。主に2期生は1期生が残してくれた成果をもとに、さらに次のステップにつなげるように活動してきました。
私自身はこれまで大きな企業のアカウント営業を経験しておりますが、大企業と中小企業で求められる営業の質の違いに驚かされました。大企業では、自らが自社の通信やITについて検討する部門があり、仕様もかなり具体的な内容になってから商談が来ていました。そのため、営業はある程度決められた仕様の中で技術的な解決策を提示したり、価格を調整する方法を検討したりして、提案します。ところが、中小企業ではまだ顕在化していない悩みに気づいてもらったり、ともに解決策や仕様を考えたりするところから始まります。営業として求められる資質が変わったと思い、1から勉強するつもりで研修に取り組みました。2年目のテーマは活動量から、さらなる活動の質に移行しています。営業活動がうまくいき契約ができたときに、よりポテンシャルが高いお客様のほうが回線数の増加や、のちのソリューション商材へのニーズへつながることが分かっていました。そこで、1期生のノウハウを参考に3つのターゲティング条件を決め、ターゲットと決めたお客様には3カ月かけて「キーマンに会う」「必要な情報を獲得する」などの一定の営業プロセスまではチャレンジするようにやり方を変えました。2期生の成果としては、お客様訪問前の事前準備がメンバーだけでなく、周囲の営業担当にも定着し、活動量に対する案件化率が着実に向上してきている状況にあります。総じて2年目の作戦の効果が出ていると思います。

櫻庭 与恵 法人営業部 法人営業担当
櫻庭 与恵

櫻庭 私は2期生として研修に参加しました。はじめ営業部門に職種変更が決まったとき、自分は営業に向いていないと思っていたので積極的な気持ちになかなかなれませんでした。話すのも得意なほうではないので、正直、営業の業務についていけるか不安でした。
今回、研修を受けることができて気持ちが本当に楽になりました。営業経験がなかったのでどのように営業活動をすればよいかという手順やルールが分からなかったのですが、営業プロセスやセールスアクション集などが1期生の成果でまとまっており、手順がすぐに理解できました。
また、研修の中でプロービングという相手の興味や悩みを引き出す質問の仕方を教わり、決して話すことが得意ではなくでも、相手に話していただき、しっかりと聴くことで営業としての役割が果たせることが体感できました。今では、営業という仕事に積極的に取り組めるようになったと思います。丸先生の研修は、営業として自信を持たせてくれるところが大変ありがたかったです。営業経験がなかったので全く自信がなかったのですが、研修を受けて自信が持てるようになりました。実際に結果もついてきて、営業部門に配属された新しいメンバーの中で新人賞をもらうことができました。本当に感謝しています。

3期生に向けて:営業マネジメント力を向上・定着させる

八木田 マネージャー対象の支援(マネジメント会議)では、アウトプットとしてマネジメント向けのガイドブックを自主的に作成しており、質の高いマネジメントの定着に向けて指導を受けています。まだ途中段階ですが、良い仕上がりになりそうな期待感があり、3年前の自分に渡してあげたいくらいです。
営業プロセスが分かりやすくなったことで、マネージャーとしても、部下がどこまで努力したのかが分かりやすくなり、今はどの案件を優先するのか、または一時的に優先度を下げるのか、などの指示を出しやすくなりました。上司と部下のその案件に対する意識のズレが少なくなったのも研修の成果ではないかと思います。

石崎 バーチャルメンバーを2回経験させていただいた中で、1回目よりも2回目でやっていることは大きくは変わらないのですが、営業に関する理解が深まっていると実感させられます。ツールや帳票が同じものだとしても使いこなすレベルが上がったり、新しくマネージャーとしての視点が加わったり、研修の深みを日々実感しています。今後も効果が実感できる指導を期待しています。

1期生の成果:セールスアクション集

チームで取り組む作戦 チームで取り組む作戦
個人宣言シート 個人宣言シート

2期生の成果:ターゲティング

ターゲット管理:選定基準(NB) ~超重点先を選ぶ方法~ ターゲティング選定基準
ターゲット管理:リスト層別&攻略方針をセットで意識する リスト層別攻略方針

インタビュー後記

丸 尚

富士ゼロックス総合教育研究所
(現 パーソル総合研究所)
コンサルタント 丸 尚

Profile:1992年 当社に入社、営業・営業課長・西日本支社長を経て、営業組織開発分野の企画・開発・登壇に従事

今回は本当に受講いただくメンバーに恵まれました。素直で前向きな人が多く、まずやってみようという雰囲気があったため、想定していた学びがうまく現場に浸透していきました。成果は一人ひとりの取り組み方だけでなく、実際の数字にも表れています。研修の中身のベースとなる考え方は弊社にあるいくつかの標準プログラムです。年間を通じたロングレンジの計画の中にその標準プログラムでの重要となる要素を盛り込み、実践を経て体感しながらトレーニングできるように全体の流れを計画しました。さらに「営業活動の量」と「営業活動の質」を「チーム営業」として追い求めることが、組織に浸透するように計画を遂行していきました。バーチャルチーム方式という新しいチャレンジも新鮮でした。組織内でフロントランナーを作り、各メンバーを自チームへ還元することで効果が組織の隅々まで浸透できることが実証できました。自分自身としても新しい発見がありました。毎年、みなさんのレベルが上がっていくので、こちらも気合が入ります。今後も営業の仕組みが深く浸透するように、お手伝いさせていただければと思います。

取材日:2017年8月。所属・役職は取材当時のものです。

※富士ゼロックス総合教育研究所は、2019年7月パーソルラーニング株式会社に、
2021年4月株式会社パーソル総合研究所に社名変更しました。

人材開発・組織開発

PAGE TOP