マネジメントが難しい職種・業態だからこそマネジメントを組織の文化に

メディカルシステムネットワークグループ様事例

メディカルシステムネットワークグループ様
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メディカルシステムネットワークグループは、医薬品を中心に健康を支えるトータルサービスを全国に展開しています。医薬品ネットワーク加盟数は5,026件、「なの花薬局」を代表とする調剤薬局店舗数420店舗を誇ります(2020年1月6日現在)。地域に密着した事業を展開し、住み慣れた地域で生涯安心して暮らせるまちづくりの一翼を担うため、良質な医療インフラの創造に向けて日々挑戦しています。

<企画部門責任者・ご担当者へのインタビュー>

マネジメントのセオリーを学ぶ場がなかった

山田 修平 執行役員 薬局事業本部長
山田 修平

金森 淳一 薬局事業本部 地域薬局事業部 副部長
金森 淳一

高橋 千春 薬局事業本部 地域薬局事業部
地域薬局事業セクション リーダー
高橋 千春

山田 少子高齢化の進展により国の財源が厳しくなり、医薬の分野においても環境は大変厳しくなっています。薬局の現場では、対人コミュニケーションなど求められる業務が増えるだけでなく、対応スピードなどの質も求められています。そのような中、すべての薬局でそういった変化への対応ができているわけではなく、現場レベルではやるべきことが徹底されていないという問題意識がありました。その背景には、上から降りてくる方針や目標に対する「やらされ感」のようなものが一因としてあるのではないかと考えました。薬局の長が自ら立てた計画でなければ主体的に行動ができないでしょうし、そういった行動をとるためのマネジメントも教育できていませんでした。正直なところ、当社のミドル層(ブロック長・薬局長)にはマネジメントのセオリーを学ぶ場がなく、個々の能力に頼ってきた部分がありました。そのため、マネジメントのレベルがバラバラで、組織として大きな力が発揮できていない部分があったと思います。

金森 私もミドル層のマネジメントの重要性を感じていました。私自身が本部という立場で、さまざまな施策を展開する中で、現場の薬局との距離感を感じる場面が多々ありました。

本部から指示を受けても、なぜやらなければならないのか?という背景や目的についての納得感も乏しく、我々の意志もあまり伝わっていませんでした。今後新たな経営計画を円滑に進めるにはミドル層のマネジメント研修は必須だと考えていました。

それまでも研修がなかったわけではありませんが、薬剤師としての技術やスキル・接遇の研修が中心でした。コーチングなど一部にはマネジメントスキルの研修もありましたが、マネジメントをきちんと学ぶには十分な内容ではありませんでした。現場では皆ががんばっているものの、ブロック長・薬局長からの伝え方・やり方が上手くないため、現場まで方針が浸透していないというのは非常にもったいない状況だったと思います。

高橋 私は、もともとは現在とは違う総務関連の部署に在籍していました。そちらの部門でも、各薬局への依頼が伝わらない・徹底されないなど、同じような問題意識を感じていました。

ありきたりな研修の組み合わせではなく、当社の課題に沿った提案だった

金森 具体的な解決策の検討にあたり、過去にパーソルラーニング(現 パーソル総合研究所)のメンバーと同じ研修を受けたことがあり、それが縁でご相談をしました。その他、いくつか研修を得意とする会社に相談をしました。

最終的にパーソルラーニング(現 パーソル総合研究所)に決定したのですが、その提案はありきたりな研修の組み合わせではなく、当社の課題に寄り添った提案だったことが一番の決定要因でした。ヒアリングを通じてこちらの課題を十分に理解しようとし、親身になって計画を考えてくれました。事務局としてもその提案が最大限の効果を生むよう、新しい事業年度が始まるタイミングで、研修で学んだことを、すぐに現場の実践で活かせるように研修と事業計画を連動させてスケジューリングしました(図1参照)。

【2018年度下期 11月 3月・4月・2019年度上期 6月 9月・10月・下期】【実践/薬局長/現場実践】【独自のマネジメントプロセスの制作】⇒【自店舗ビジョン完成→自店舗方針作成→新年度/上期 方針計画発表→メンバーとの関わり方実践→レビュー実践→下期方針・計画発表】【Plan/Do/Check Action】【「集合研修#1(1日)→」ビジョン「行動計画」「実践度web アンケート#1→」「事後課題#1」「集合研修#2(1日)→」店舗方針「行動計画」「実践度web アンケート#2→」「事後課題#2」「集合研修#3(1日)→」モチベーション「行動計画」「実践度web アンケート#3→」「事後課題#3」「集合研修#4(1日)→」レビュー「行動計画」「実践度web アンケート#4→」「事後課題#4」】図1.研修の全体像

初めての子供を育てるような不安と期待

山田 計画当初は薬局長レベルのマネジャー研修を想定していましたが、最終的に薬局長の上にあたるブロック長の研修から取り掛かることとなりました。薬局長が受講する前に、ブロック長が同じ骨格の研修を受講することで、その後のコミュニケーションをより円滑にする狙いがありました。

まずは、全国の薬局でヒアリングしながら、マネジメントの骨格となる考え方を一緒になって整理し、当社独自の「マネジメントプロセス」(図1・図2参照)にまとめたうえで、ブロック長研修に臨みました。始める前はどのくらいブロック長に受け入れられるか、事務局としても初めての子供を育てるような不安と期待がありましたが、ブロック長側もこちらの予想以上に受け入れてくれました。ブロック長自身も自分のマネジメント力に限界を感じて悩んでいた人も多かったので、いい雰囲気で研修のスタートを切ることができました。

金森 実際の研修では、事前・事後課題も多く、通常の業務と並行してそれらを進めることは大変な努力が必要だったと思います。各ブロックのビジョンを作って、各薬局長へ展開していくような研修もあったので、現場とのコミュニケーションに苦労した人も多いと思います。

ただ、ブロック長本人たちから、自分たちだけが大変だと言っていてはだめで、後任を育てなければその問題は解消しないという趣旨の発言がありました。当事者として人を育てなければならないということに気づき、主体性も出てきたことは大変大きな進歩でした。

本来、薬剤師は小さな店舗の中で仕事をすることが多く、なかなか組織というものを感じる場面がありません。研修を経験したブロック長から、自らの言葉で組織として成長をしていく必要性への発言が出てきたことに意義があると思います。実際に経営メンバーからも、ブロック長の発言が変わってきたと評価される場面もありました。

「薬局長のマネジメントプロセス」【フェイズ…中期計画と連動し設定 ビジョン設定 →期中 店舗戦略 →期中 店舗づくり・店舗運営 →期末 レビュー →人材育成・店舗風土醸成】【定義… 患者さまファーストで、地域、自社・職員に価値をもたらす中期的な自店舗のありたい姿を描き、職員の意欲と一体感の醸成につなげる。→地域の医療ニーズを踏まえ、医療関係者と連携して患者さまに貢献するという観点のもとに、店舗経営者として期の重点実施計画を策定し、職員に理解、納得を得る。→かかりつけ薬局として地域から選ばれるために、地域医療ニーズに対する情報発信と店舗づくりを行い、正確な調剤と親身な応対によって患者さま・利用者の信頼と安心を得る。→地域医療ニーズの変化や患者さまの満足度を把握しながら、実施計画の進捗管理及び期の活動レビューを行い、次にむけての課題を明確にする。→職員一人ひとりの成長課題を把握し、業務を通して能力向上を図る。】【ブロック長/職員から薬局長への期待】【薬局長の具体的行動】図2.マネジメントプロセス

薬局長への手紙を何度も読み返す人も

金森 現在、ブロック長研修での成果を受け、次のステップの薬局長への研修がスタートしています。ブロック長の主体性が高まったおかげで、その下の薬局長の研修にオブザーブで参加したいという人も出てきました。

また、先に同様の研修を受講しているブロック長から、「事前・事後課題は大変だけど、苦労すればするだけ力になります。後で良かったと思える時が来ます。」と薬局長を励ましている場面もありました。受講者側から、そのような評価を得て、事務局としても大変やりがいがありました。

高橋 薬局長への研修開始にあたって、ブロック長から自身が担当する各薬局長への手紙を全員に渡しました。事務局としてその準備のお手伝いをしましたが、「一緒にがんばっていきましょう。」という激励のメッセージや、「考えて困ったりしたときは、相談してください。」、「変えていきましょう。」といった前向きな言葉がたくさんみられました。研修会場では、その手紙を何度も読み返している人もいて、いい取り組みだったと思います。

パーソルラーニング(現 パーソル総合研究所)の柔軟性と総合力の高さを評価

山田 この研修が出来上がるまでに、パーソルラーニング(現 パーソル総合研究所)の皆さんとは、全国へのヒアリングをはじめ、相当のやりとりをして企画をブラッシュアップしてきました。ありきたりの研修ではなく、大変自由度が高かったので、よい形に仕上げることができたと思います。

研修中も講師が現場での反応を共有してくれ、その場でより良くしようと努力してくれていました。我々の業界に詳しい講師もおり、業界ならではのつかみの話などをしてくれ、現場メンバーの心に響く研修を実現してもらったと感じています。

高橋 私たち事務局へのサポートについても、きめ細やかな対応で大変ありがたかったです。他のプロジェクトもお忙しかったと思いますが、それを感じさせないくらい丁寧に、運営がやりやすくなるように手助けをしてくれたことに感謝しています。

金森 パーソルラーニング(現 パーソル総合研究所)の皆さんは一緒に考えてくれる姿勢が素晴らしく、大変相談しやすかったです。キャラクターも良い人が多く、講師レベルも高く、総合力がある会社だと感じました。

経営基盤の強化に向けて

山田 今回やったことをブラッシュアップしながら、しっかりと続けて定着させることがまずは重要だと思います。そのためにも、人事制度をはじめとする他の仕組みと連動させて、評価指標を固めて会社の文化にしていきたいと考えています。

また、研修がどの程度効果があったかを数量的にも検証できるようにしたいです。ES(従業員満足度)の向上や退職者の減少などもひとつの指標だと思いますし、複合的な観点でより価値の高い取り組みにしていければと思います。

個人的には、事務局としてブロック長とのコミュニケーションが増えたこともひとつの成果でした。ブロック長の中にも、このテーマならこの人、あれが得意なのはあの人、という形で協力者が増えてきました。今後、より高いレベルのマネジメントを求めるときにも、やりやすい土台ができたと思います。

高橋 当社は急速に拡大しており、中途で入っている人も大勢います。組織文化がもともと異なる人もいます。そのため、それぞれの経験則でマネジメントするのではなく、会社全体の共通のノウハウをしっかりと確立し、途中から参画した人にもしっかりと浸透できるようにしていきたいと思います。

金森 薬局という狭い場所にいると、視野が狭くなったり、視座が低くなってしまったりしがちです。すべての薬剤師にとっても、業界環境を理解し、自己分析を深め、その地域にとって自分たちがどうあるべきかを考えることは必要不可欠です。そういう意味でも、今回はミドル層のマネジメントが主たるテーマでしたが、もっと若年層から健全な問題意識を高める必要性があると思います。マネジャーになる前からさまざまな視点を学び、厳しさも伝えなければなりません。いざマネジャーになったときにも、スムーズにステップアップできる取り組みができればと考えています。

私たちの業界でも変化は激しく、旧態依然としていては生き残ることはできません。マネジメントが難しい職種や業態だからこそマネジメントを浸透させ、会社としてしっかりとした経営基盤をつくることに貢献したいと思います。

<研修受講者 ブロック長へのインタビュー>

ブロックビジョンと店舗目標を策定し連帯感が出た

久保寺 光徳 なの花薬局 調剤事業部 ブロック長
久保寺 光徳

ブロック長は、基本的に店舗には所属せず、複数の店舗を管轄しています。それぞれの店舗の問題点を洗い出し、改善策を考える役割を担っています。私自身は、町田市・川崎市の計8店舗を担当しています。

ブロック長になるにあたって、薬剤師としての能力とマネジャーとしての能力はまったく別ものだと感じていました。薬剤師として優秀だった人が、必ずしもマネジャーとして優秀というわけではありません。私も薬剤師としてのキャリアを経てブロック長になったため、ずっと薬剤師としてのキャリアしか積んでおらず本当にマネジメントができるのかという不安はありました。

そんな時、研修の案内がありました。正直、研修の計画を聞いたときに、1年がかりの計画ということで、長いという印象がありました。ただ、ブロック長になってからまだ日が浅かったので、マネジメントを学べるという期待もありました。自分にとっていいタイミングだったと思います。

研修は事前・事後課題も多く、はじめはかなり大変な印象でした。しかし、研修を経るにしたがい、これはいい研修だと思うようになりました。特に印象的だったのは、3回目のモチベーションの研修です。同じ質問をするにしても、聞き方次第でどう印象が変わるか?やる気がどう変わるか?という質問スキルの研修で、現場ですぐに使えそうな内容でした。だめな例とよい例が提示され、理解もしやすい内容でした。

さらに、研修を通じてブロックごとにビジョンを作成し、各薬局長にも各薬局の目的や目標を整理してもらっています。私たちのブロックでは、店舗形態がさまざまであり、幅広いお客さまに対応する必要性があります。特に駅前店などは、潜在的に患者ではない人もおり、処方箋を持っていない方には、また違った接遇をする必要があります。そのため、立地との兼ね合いを考えた、その店舗ごと作戦が必要になってきます。それぞれの店舗で何ができるかを薬局長自身が考えることに大変意味があります。

ブロックのビジョンとそれに紐づく各薬局の目標設定ができたので、ブロックとしてひとつの方向性が定まったと感じています。目標が定まり、連帯感も出てきました。そのプロセスを通じて、薬局長ともより深く話すようになり、相手の考えが理解できるようになってきました。マネジャーとして漠然と現場を回せればよいと考えていたレベルから、レベルアップできた気がします。今は1年の研修を経て、マネジャーとしてできていなかったところが以前より見えてきました。前任のブロック長から教わった部分もあり、実際にマネジャーとして解決できるところが増え、マネジャーとしてのやりがいも感じるようになりました。

私は薬局業界自体が受け身の業界だと思います。薬剤師には、マネジメントという考え方自体があまりなかったかもしれません。そのため、マネジメントはマネジメントのプロに教わり、積極的にノウハウを吸収していくことが必要なのではないかと感じました。

伝え方や会議のやり方を変えて、会議が活性化した

松井 優子 なの花薬局 調剤事業部 ブロック長
松井 優子

私は大阪の梅田エリア・京都などを中心に計10店舗を担当しています。

研修の最初の印象は事前課題が多いことでした。本も分厚いものが指定され、いつ読めばいいんだろうと考えてしまいました。自分が苦手だと思う分野のものもあり、不安はありました。しかし、研修が進むにつれ、本当にいい研修だと感じるようになりました。

私の場合は、特に研修の形態に興味を持ちました。グループディスカッションのやり方や、意見を出しながら結論を探していくワークショップなど、参考になる会議の進め方がたくさんありました。それまで、ブロック会議をしていても、反応がなく、本当に届いているのか?と感じる場面もありました。その後、研修で学んだ会議手法を参考にして、議論が促進されるように工夫しました。すると、私が言えば上から降りてくるように感じるものも、薬局長同士の意見だと受け入れやすくなり、議論が進む経験をしました。やはり、それまで反応が良くなかったのは、相手が悪いのではなく、伝え方や会議のありように問題があったのだと感じています。

また、研修が終わるたびに事務局から進捗の確認が必ず来きており、このやり方も参考になりました。研修の中で目標と実行すべき内容を決めています。その決めたことを実行できているかの確認が事務局から1か月後、3か月後といいタイミングできます。自分自身のやり方は私から現場に依頼を落とすときも言いっぱなし、投げっぱなしだった部分があり、やはりマネジャーとして足りていなかったと感じました。確認の仕方や、どのくらいの期間で確認を促していくかという部分も参考になりました。

1年の研修は始まってみれば、学びが多く、あっという間に感じました。今ちょうど薬局長研修が始まったところです。課題が大変という声ももちろんありますが、すでにすごく良かったという声も出ています。

振り返れば、ブロック長になるときにマネジメントをするというイメージは私自身希薄だったかもしれません。当時のイメージでは、本部からの方針を伝えるのが役割だと思っている側面がありました。しかし、実際やってみて、そんな甘いものではなく、うまくいかないことも多々ありました。今回の研修では、それらの原因も分かり、改善できた点が多くありました。

この研修については、全薬局長にぜひ受けてほしいと思っています。私自身も薬剤師からブロック長になっていますが、薬剤師はどうしても日々の業務の中で、視野が狭くなったり、視点が固まったりしやすい職種だと思います。また、日々の会議の中ではディスカッションの場は多くはありません。こういった研修の機会があれば、いつもとは違ったメンバーと議論をし、大変刺激になります。自分自身のレベルアップや店舗のレベルアップに必ずつながると思います。

なの花薬局なの花薬局

取材日:2019年12月。所属・役職は取材当時のものです。

※パーソルラーニングは、2021年4月、パーソル総合研究所に社名変更しました。

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