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最新のグローバル調査から見えた世界トップレベルの営業組織の特性とは~法人営業力強化の最新動向~

セールスイノベーショングループ コンサルタント
PSSなどグローバルパートナーの科学的な営業教育プログラムのローカライズ開発、オーダーメイド開発、リサーチ&アセスメントの企画・実行支援に従事。
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弊社は長年、営業組織力強化のコンサルティングやセールススキルトレーニングによって、数多くの企業の営業変革をご支援してきました。このたび法人営業力強化で世界トップのミラーハイマングループとアライアンスパートナー契約を結び、ご支援内容の更なる強化を進めています。
本コラムでは、ミラーハイマングループ内の専門調査機関 CSO Insightが2003年から14年にわたり毎年実施している「セールスベストプラクティス調査」の最新版の結果速報をもとに、高業績を上げ続ける営業組織の特性について考えていきます。
1. “下りのエスカレーターを駆け上がる”ような厳しさの中で
今年の世界経済は流動的で、各国の選挙結果が国際取引に及ぼす影響の予測が難しい状況です。さらに、技術革新が非常に速いスピードで進み、人工知能(AI)は、すべての業界に変化をもたらすと予測され今までのやり方では通用しなくなっていきます。“下りのエスカレーターを駆け上がる”状況を思い浮かべてください。一瞬でも立ち止まると、すぐに下に運ばれていきます。現状維持という選択肢はなく、前進か後退かを決断しなければならないのです。
営業環境に目を向けると、下記図1のように営業担当者の目標達成は、5年前より難しくなっています。2012年には63%の営業担当者が目標達成できていたのが、2016年には53%となり10%も低下しています。一方、全社の収益計画の達成率は2012年から一旦落ち込んだ後、2016年には回復傾向にあります。未達成の営業担当者が増える中、必死に“下りのエスカレーターを駆け上がって”いる好業績営業が存在するのかもしれません。
(図1) 営業担当者の目標達成率と企業全体の収益達成率
CSO Insight社では、前進を決断し、エスカレーターの上まで昇り詰め、さらに屋上のヘリポートを目指す営業組織のために、世界トップクラスの営業組織の特性について調査分析を進めています。
まず、CSO Insight社の統計分析から考案された法人営業組織の業績を測るフレームワークをご説明し、最新の調査結果をご紹介していきます。
2.営業業績を高める要因は「営業プロセス」と「顧客関係性」にある
CSO Insight社が2006年から11年にわたり毎年実施している「営業パフォーマンスの最適化に関する調査」によって、次の4つの営業パフォーマンス指標が、「営業プロセス」と「顧客関係性」の成熟度と連動することがわかりました。
- 売上目標達成者の割合
- 全社の収益計画の達成率
- 売上予測の精度
- 全社の営業担当者の離職率
この調査結果に基づき「セールスリレーションシップ/プロセス(SRP)マトリクス- Sales Relationship/Process(SRP) Matrix (SRP)」が生み出され、ミラーハイマングループではコンサルティングで活用しています。これを使うことで、法人営業組織のパフォーマンス強化と生産性向上の方向性を検討することができます。
このマトリクスは、横軸に「営業プロセスの成熟度」、縦軸に「顧客関係性の成熟度」のレベルを置いています。「営業プロセス」と「顧客関係性」の2つの視点で、営業組織の現状(現在地)と、今後競争力を高め続けるために到達したい位置(目指す位置)をマトリクス上にプロットし、その変化を実現するための今後の取り組み課題を考えます。
(図2)【セールスリレーションシップ/プロセス(SRP)マトリクス】
マトリクスの横軸「営業プロセス」レベルは、標準プロセスの有無や営業活動へのプロセスの活用をどの程度モニタリングしているかでレベル分けしています。
マトリクスの縦軸「顧客関係性」レベルは、レベル1から3までは製品を軸とした関係性、レベル4と5は、製品を超え顧客の成功支援を軸とした関係性を構築できているかどうかでレベル分けしています。
下記図3では「営業プロセス」や「顧客関係性」レベルとパフォーマンスレベルの関係をマトリクス上に表しています。パフォーマンスレベルは、前述の(1)売上目標達成者の割合、(2) 全社の収益計画の達成率、(3) 売上予測の精度、(4)全社の営業担当者の離職率という4指標と調査回答者の回答内容から3段階(パフォーマンスレベル1~3)に設定されています。マトリクス内に表示しているパーセンテージは、最新の調査結果として回答組織の何%がそのレベルに該当しているかを表しています。
(図3)【セールスリレーションシップ/プロセス(SRP)マトリクス 2017年調査結果-】
「営業プロセス」レベルを上げてマトリクス上の位置を右側にシフトする、もしくは、「顧客関係性」レベルを上げて上に上昇することによって、営業パフォーマンス指標を向上させることができます。なお、最新の4指標のパフォーマンスレベル別の数値が下記図4です。
(図4)セールスリレーションシップ/プロセス(SRP)マトリクス-レベル別数値表-
ここでみなさんは、「どんな業種でも、営業が顧客の経営課題達成のパートナーを目指せるのだろうか?」という疑問が浮かんだのではないでしょうか?
ボルトやネジなど部品メーカーの営業を例に考えてみましょう。こうした製品はコモディティ化しており、顧客にとって戦略的な要素は乏しいといえます。営業が「顧客関係性」レベル5を目指した情報提供や対話に精力を傾けたとしても、顧客から経営課題達成のパートナーと認められるのは実際には困難でしょう。こうした業種では、「顧客関係性」レベル3を上限と捉え、業務課題解決の相談相手を目指します。その実現のために「営業プロセス」の中に、商品の組み合わせ提案やオプションサービスの提供、上流サプライヤーとの提携を通じて顧客のニーズによりよく応える方法などを組み込み、営業活動の質を上げていきます。その活動をモニタリングし徹底することで「営業プロセス」を最高のレベル4へと高め、パフォーマンスレベル3を達成できます。
3. 自社が目指す営業力強化のロードマップを描く
何もしなれば、どんどん下の階へ降りてしまう“下りのエスカレーターを駆け上がる”ために、最善の方法は何でしょうか。ミラーハイマングループでは、目指すレベルまで「営業プロセス」と「顧客関係性」を高めるために、Miller Heiman Group Sales System®というフレームワークを活用しロードマップを描きます。
初めて目にされる方もいらっしゃると思うので、Miller Heiman Group Sales System®について説明しましょう。
(図5)Miller Heiman Group Sales System®
中心にあるのはお客さまです。営業組織の使命は、顧客が購買や課題解決を効率的かつ効果的に進められるようにお手伝いすることです。営業組織の活動はすべて、この使命と結びついていなければなりません。
内側の輪は、セールスリレーションシップ/プロセス(SRP)マトリクスの縦軸「顧客関係性」を上昇するための3つのサイクルです。各サイクルを最適に回すために次の項目を実行するための考え方、スキル、手法を必要とします。
- ①. 営業機会の創出
市場開拓による見込み客づくり、見込み客の見極めと接点づくり、ニーズの把握、有効なオポチュニティの特定 - ②. 営業機会のマネジメント
見込みの高い営業機会へのリソース配分、成約までの営業プロセス管理 - ③. 顧客関係のマネジメント
既存の顧客関係の維持拡大
外側の輪は、マトリクスの横軸「営業プロセス」を高めるための要素です。そのための実行体制、テクノロジー、しくみが含まれます。
- ⅰ. セールスオペレーション
営業生産性を向上させるシステム、運用ルールの展開(営業プロセス、CRM、テリトリー設定、パイプライン管理、売上予測) - ⅱ. 販売促進のしくみ
営業生産性を向上させるために、営業担当者や営業マネジャーに提案内容、トレーニング、コーチングを提供 - ⅲ. 戦略の実行
組織間連携を図るために、重要な活動、プロセス、手法を強化 - ⅳ. 人と組織
好業績を上げるための組織編制、人員配置
最新の調査結果では、世界トップレベルの営業組織は、内側の円の「③顧客関係のマネジメント」、外側の円では「ⅰセールスオペレーション&ⅱ販売促進のしくみ」に優れた特性があることが分かりました。
これは、世界トップレベルの営業組織が、既存顧客の契約継続や取引拡大に価値を見出していることを表しています。回答者は売り上げの68%が既存顧客からであると答えています。一方、半数以上(55.9%)の回答者は、既存顧客内の新しい部門との取引開拓をする能力の改善が必要と回答しています。既存顧客内での新しい「営業機会の創出」も重視されているのです。
また、こうした「顧客関係のマネジメント」を強化するために、「セールスオペレーションと販売促進のしくみ」に力を注ぎ組織として営業生産性の向上を図り営業パフォーマンスを高めているといえます。
さらに、最新版の「セールスベストプラクティス調査2017」では、営業組織のパフォーマンス指標に強く影響する要素として12の特性を特定しました。
その中で最も影響が強いのは「顧客関係性」に関する特性で「セールスがお客さまのニーズに合わせてカスタマイズした解決策について、一貫性のある効果的な説明ができる」というものでした。
目新しさはありませんが、いざ実行するのは難しいことです。製品が増え複雑になっている中、解決策を最適にカスタマイズして作り出すことの難易度は高くなっています。さらにお客さまが以前より格段に詳しい製品情報を持つようになったため、標準的な機能や利点の説明では、関心をもってもらえません。
お客さまが気づいていない視点からニーズや解決策の効果を示す力が必要なのです。このように高いパフォーマンスを上げている営業組織は何が違うのかを知ることは、自社の営業力強化のロードマップとして具体策を立案するための強力な指針となるでしょう。
参考文献
- 2017 CSO Insight World-Class Sales Practices Report (CSO Insights)
Sales Performance Optimization Study 2016 Key Trends Analysis (CSO Insights)
※本コラムは、株式会社富士ゼロックス配信のメールマガジン「X-Direct9月号」に掲載されたものです。
コラム内容は予告なく掲載終了する場合がございますので、予めご了承くださいますよう、よろしくお願いいたします。
著者プロフィール

パーソルラーニング株式会社 セールスイノベーショングループ コンサルタント
働く人の自立的な学びの情報環境づくりのマーケティング企画およびコンサルティング営業を経験後、2000年パーソルラーニング株式会社に入社。PSSなどグローバルパートナーの科学的な営業教育プログラムのローカライズ開発、オーダーメイド開発、リサーチ&アセスメントの企画・実行支援に従事。現在は、「法人営業力強化」をテーマにソリューション開発とマーケティング展開に取り組んでいる。