継続性の高い「学び」をどうデザインしていくか

瀬戸 亜美
瀬戸 亜美

トレーニングパフォーマンスコンサルタント

大手出版社にて雑誌編集業務、ベンチャー企業の立ち上げにて法人営業や人材育成を経験、教育研修事業会社での講師経験を経て、2018年よりパーソルラーニングの研修講師として営業スキル研修、プレゼンテーション研修、マネジメント研修など多数の研修を担当。

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「社員によって学びに対するモチベーションが違い過ぎて、どうフォローしたらよいかわからない」「研修で上がったモチベーションをその後も持続させるにはどうしたらよいか」――企業教育を担当する方から、このような相談をよくいただきます。目まぐるしいスピードで変わっていくビジネスシーンにおいて、学びが継続しない人はパフォーマンスにも影響します。しかし学び続けるには、学ぶことへのモチベーション維持も必要です。

「人によって学びへの意欲や姿勢に温度差がある、研修後のモチベーションが持続しない」、こうした悩みを解消するには、教育を提供する側にも受講者のモチベーションを落とさないための仕掛けや工夫が必要になります。では具体的にどうすればよいのでしょうか。本稿では、継続性の高い「学び」をどのようにデザインするかという視点でお話していきます。

1. 大事なのは内側からのやる気を引き出す「内発的動機づけ」

まず、モチベーションについて改めて理解をしておきましょう。モチベーションは一般的に「やる気」「動機づけ」と捉えられており、現在、動機づけには3つの段階があると言われています。

モチベーション1.0 生理的動機づけ 人間の最も原始的なやる気。空腹を満たす、生殖など生存本能に基づくもの
モチベーション2.0 外発的動機づけ 外部刺激によって発動されるやる気。強制や懲罰、評価、報酬に起因するもの
モチベーション3.0 内発的動機づけ 自らの内側から湧き出るやる気。興味や楽しさが起因となり自発的な取り組みを促進するもの

(図1) 『モチベーション3.0』(ダニエル・ピンク著/大前研一訳 講談社)より

単純作業がだんだんと機械化され、正解のないクリエイティブな仕事が増えている現在、人々は「生きていくため(生理的動機づけ)」や「アメとムチ(外発的動機づけ)」だけではモチベートされません。内側からやる気を起こさせる「内発的動機づけ」こそが、モチベーション向上やモチベーション継続のカギを握るのです。

研修トレーナーとして私が重要視しているのも、受講される方たちの内発的動機をいかに刺激するかです。そのために、研修の際には受講者の方に自己紹介で「研修に対する期待」「解決したい課題」を話してもらいます。開始前に「こんな研修だったら嫌だなぁと思うことはありますか?」「今日の研修は〇〇さんにとって、どんなタイミングだと思いますか?」「(選抜型研修の場合)選ばれしメンバーになれたのは、どんな期待があってのことだと思われますか?」といった問いかけをし、休憩時間などに、抱えている課題とプログラムとの関連性やフィット感をざっくばらんに尋ねたりしています。

これらがトリガー(きっかけ)となり内発的動機づけが刺激されると、研修の雰囲気が一変します。研修中に「ハッ!」と音がしたようになり、皆さんの表情が引き締まります。集中も途切れることなく続いて、さまざまな気づきを得て帰っていただくことができます。

2.モチベーション、トリガー、スキルの相関関係

研修での気づきが日常業務の行動変容につながっていく。それが集合研修の目的であり、役割です。ところが実際は、研修の場で「ハッ!」となっても、研修を終えて日常業務に戻ると、多くの場合、学びへの意欲や研修で得た成果(スキルや気づき)が薄れていきます。

人が行動を起こすには、フォッグ式消費者行動モデルによると「モチベーション(Motivation)」「行動するための能力(Ability)」「行動を起こすトリガー(Trigger)」の3つの要素がすべて必要とされています。どれかが欠けていたり、十分でなかったりすると〝行動〟にはつながりません。研修での学び(スキルや気づき)が日常に引き継がれていかない理由は、ここにあると考えられます。

たとえば「わかる」と「できる」が違うように、研修で学んだことを日常で再現する能力がなければ、当然モチベーションは下がります。学びへのモチベーションが著しく上がったとしても、その後にトリガーがなければ継続性を失います。

言い換えれば、研修受講後に起こる問題や教育担当者としての悩みは、「モチベーション・トリガー・スキル」の3要素を意識することで解消していくことができるのです。日常業務の中でも学習のトリガーを用意し、モチベーションやスキルを維持・向上させるための仕掛けや仕組みを考えていくことが大切です。

3. 「学ぶこと」と「働くこと」をイコールにする

教育を提供する側にしても、受講する側にしても、今はまだ研修と日常業務をハレとケで分けて考え、「学習の場と時間を提供するのが研修、業務を行うのが日常」と捉えている方は少なくありません。

マイケースを持ち寄った課題解決実践型の研修プログラムは増えていますが、学習スタ イルで考えると、あくまで日常業務を研修に持ち込んでいるだけに留まり、日常の中に学習がブレンドされているわけではありません。

「最終学歴ではなく、最終学習歴が重要」と言われるようになって久しく経ちます。組織の中で学ぶ人を絶やさず、学習歴を更新し続ける人を増やしていく。そのためにはマイクロラーニング(※1)やブレンディッドラーニング(※2)を用いて、学習と業務の境界線を緩やかに混ぜていくことがカギとなります。

たとえば、企業として全社員に学習しておいてほしい知識・スキルの概要はオンラインやマイクロラーニングで、気づきによる意識の醸成や学びの定着実践は集合研修で用意する。あるいは、いつでも好きなときに数分で学べるようにオンラインでパーソナルラーニングの場を用意する。このような仕組みをデザインすることもできます。

ブレンディッドラーニングのイメージ

(図2) ブレンディッドラーニングのイメージ

キーワードは「学ぶことと働くことをイコールにする」です。 「学ぶこと」と「働くこと」をイコールにする仕組みをどうデザインするか。どのようなやり方があるのか。多様な学びの場と機会をどう整えていけばいいのか。このようなことにご興味がありましたら、ぜひお問い合わせください。

  • ※1. マイクロラーニング
    1~3分程度の短い学習コンテンツを、パソコンやタブレット、モバイルなど、様々なデバイスを通じて視聴する新しい学習スタイル
  • ※2. ブレンディッドラーニング
    集合研修やオンラインラーニングを組み合わせてデザインする学習スタイル。

著者プロフィール

瀬戸 亜美

瀬戸 亜美

パーソルラーニング株式会社 トレーニングパフォーマンスコンサルタント

大手出版社にて雑誌編集業務、ベンチャー企業の立ち上げにて法人営業や人材育成を経験、教育研修事業会社での講師経験を経て、2018年よりパーソルラーニングの研修講師として営業スキル研修、プレゼンテーション研修、マネジメント研修など多数の研修を担当。受講生に思考と行動への気付きを促す研修をスタイルとしている。

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