不透明な時代に先駆けてプロジェクト・リーダーにチャレンジ ー トップ10 STRATEGY EXECUTION トレンド2019 より ー

三好 雄介
三好 雄介

ソリューションビジネス部

IT系教育会社を経て、2004年、パーソルラーニングに入社。営業、営業マネジャーを経験し、現在、プロジェクトマネジメント分野を中心に、営業力強化や組織活性化といった幅広いテーマにおいて教育プログラムの企画・設計・開発・研修登板に携わる。

プロジェクトはビジネスの実現手段の一つと言われていますが、アジャイルの普及などもあり、ビジネスとプロジェクトの境界線は、日に日に曖昧になっています。弊社の海外アライアンスパートナーであるStrategy Excution社から毎年発信される「Top10 Trends」を読み解き、プロジェクトあるいは、プロジェクトマネジメントの切り口からビジネスのトレンドを考えます。

1.破壊的技術は軌跡を描き続ける

今、ある業界において成熟という名の秩序が保たれていたとしても、それはある種の踊り場に過ぎず、業界内むしろ業界外から破壊的技術を伴った環境変化が必ず訪れるのでしょう。
自社がその先鞭をつけることが最善の策でしょうが、その難易度は決して低くありません。次善の策として、組織あるいは中核となる個人の適応型マインドセット・スキルセットを育む必要性が説かれています。適応型リーダーシップ、あるいはアダプティブリーダーシップというキーワードの出現より数年が経ち、いくつかのコンセプトが提唱されていますが、共通するのは「正しく見る・正しく考える・正しく行動する」という点に集約されるように感じます。そしてこれらは、“踊り場”の業界であったとしてもプロジェクト・マネジャーやリーダーに求められる素養と言えるでしょう。

2.人工知能とビッグデータの浸透

数年にわたって「AIに仕事を奪われる」といった記事が散見されました。しかし、その後アーンツ論文などによって、仕事は様々なタスクの積み重ねであり、AIが奪うのはタスクの一部に過ぎないという反論も見られるようになりました。タスクを減らした分、発揮すべき重要な能力が“人間力”ということです。この人間力を、2つの側面で捉えており、チームビルディングなど当たり前のことに加え、ビッグデータの活用というやや飛躍した点を加味しているのが特徴的です。某コンビニエンスストアチェーン曰く、「POSによって収集したデータは売れた商品の分析に過ぎず、売れる商品の分析ではない」そうです。ビッグデータにどのような切り口を当てるのか、それによってどのような仮説を立てるのかということに人の感性が欠かせないということなのでしょう。
プロジェクト・マネジャーであれば、ステークホルダーとのコミュニケーションだけでなく、データから見える進捗状況から踏み込んでどのような考察を加えるのか、そこからどのような仮説を立ててどのような対策を立てるのかが重要でこれらの振る舞いも、テクニカルな側面だけでなく、ある部分では人間力によって支えられていると言えるのでしょう。

3.ベンダーマネジメントとアウトソーシング領域の拡大

一読して問題意識を感じざるを得ないのは「調達の最初から最後まで管理する」という点です。発注と検収に管理工数の多くが割かれ、その経過において本当に必要なコミュニケーションが取られていないプロジェクトは後を絶ちません。根底にあるのは内製化によって本来発生するリスクを外注先へ移転する、という考え方だと思われます。変化に乏しい“踊り場”の環境であればこの考え方も正しいのでしょう。しかし、そうでない環境では、発注当初に正しかったことが時間の経過とともにあっという間に正しくなくなってしまうのです。この正しさの変化に対処するために、コミュニケーションを密接にして積極的にリスクをコントロールする姿勢が必要となります。
察しや思いやりを是とする日本にあっては、お客様だから、社外だから、パートナーだからと忖度するのではなく、一歩踏み込んでコミュニケーションを取ることが「成功する関係性の構築」の第一歩となるのではないでしょうか。

4.世界情勢の変化と高まる事業の不確実性

発行元のStrategy Execution社(以下SE社)は新しい戦略を実行する際に、企業はあるべき姿に変化ないしは強化をする必要があり、その手段としてプロジェクト活動が行われるとしています。そして、より良い戦略実行のためには、プロジェクトと戦略の整合性の獲得し、プロジェクトマネジメントの品質向上が必要であることを提言しています。
さて、本項では不確実性の増大に対して、企業全体の適応能力の向上が必要であると論じています。個人の適応能力や、個人をつなぐコミュニケーションの良し悪しは企業全体の適応能力の基盤となります。しかしそれらは基盤に過ぎず、より具体的かつ直接的な要因は他にもあると考えます。あるべき姿へ変化する手段がプロジェクトであるというSE社の提言を正とするならば、プロジェクトを成功に導く能力こそが、企業全体の適応能力だと考えられます。従って、QCDの達成だけでない本当にビジネスに価値や利益をもたらしたかどうかという意味でのプロジェクト成功率は現時点における企業全体の適応能力を示す一つの指標と言えるでしょう。

5.プロジェクト・チームは共有プラットフォームに移行する

作成と受容/配布/使用/保守/廃棄という情報ライフサイクルの最適化がコミュニケーション・マネジメントの本質であり、これらを容易にするツールは多様化へと発展を続けています。今後はCRMのような機能を備え、ステークホルダーマネジメントの領域にも浸食するかもしれません。あるいはファシリテーションを支援するロボットの研究なども進んでおり、コミュニケーションそのものにもその手を広げようとしています。
プロジェクトに必要とされるコミュニケーションの本質は早々に変わるものではありませんが、ツールが進化を続ける限り、今日のコミュニケーション・マネジメントは明日必要なコミュニケーション・マネジメントではない、ということなのでしょう。

6.アジャイルが店舗から経営トップにまで広がる

不透明な環境下ではビジョン・中計・事業計画などを重視しないアジャイル型経営をすべしとの声をこの数年よく耳にします。従来型経営へのアンチテーゼと見ることもできますが、少なくとも知識としてのアジャイルは経営層に普及しつつあると言えるでしょう。
アジャイルの本質は「本当に価値あるものだけをつくる、そして、そのために個と組織の能力を最大限に引き出すためのマネジメント哲学」と捉えています。プロジェクトマネジメントの一つの手法とされるのは誤解とも言え、そもそも経営に有益な考え方なのです。
政府による少子高齢化対策を発端として現在トレンドになっている「働き方改革」は、企業としては労務改善を通過点として、新たな価値創造を将来のゴールにすべきです。経営だけでなく現場、特にこの「働き方改革」の一連の取り組みにおいてもアジャイルは有益な考え方の一つと言えるでしょう。

7.企業変革における変革そのものの遂行と管理

4.にて、企業全体の適応能力はプロジェクトを成功に導く能力であると論じました。プロジェクトは当然、新しいビジョンや新しい戦略に紐づいたものとなります。組織のマジョリティはそもそも変化を好みません。新たなビジョンや戦略に紐づいたプロジェクトを成功させるためには、まずプロジェクトの意義や必要性への理解や納得が必要となります。そして、そのためには背景となるビジョンや戦略への理解や納得を引き出す必要があるのです。マトリックス型組織で行われるプロジェクトであれば尚更のことでしょう。
こうした理解や納得を得るためには一方的な伝達ではなく双方向の対話が重要になります。企業変革を担う部署や担当者が組織に存在していなければ、プロジェクト・マネジャーが自らその責務を担う必要があるでしょう。

8.増加するCurated Learning(最適化された学び)

キュレーション(Curation)という単語は美術品の収集や展示を担う美術館の学芸員を意味するCuratorを語源としており、キュレーションサイトといえば“まとめサイト”という意味合いで使われます。そのため、Curate自体は集約し展示するという意味合いで捉えることができます。しかし、最近はこの言葉の意味合いが変化しており“最適化する”という意味を帯びてきているため、そのように補足しています。
さて、学びは、「将来のリスクに備える学び」と「直面する問題を解決する学び」の2種類に分けることができます。どちらかというと後者について、Curated Learningが必要であると本項では説かれています。より具体的には、問題の発掘・原因分析・解決策の立案・検証・普及といった学びのプロセスを業務プロセスと、できるかぎりリアルタイムに並走させる必要があると言い換えられます。この実現のためには、プロジェクト・マネジャーなど現場のマネジャー・教育研修の部門や担当者・プラットフォームの3者が協力する必要があるでしょう。

9.開発途上国におけるプロジェクトマネジメントの急成長

社会や産業の成熟度に応じてプロジェクトマネジメントのアプローチが変わると説かれています。二足歩行以来、人類は便利さを追求し発展してきました。従って、社会や産業の成熟度は“便利さの度合い”と言い換えることができます。分かりやすい不便さや分かりやすい便利さの目標やベンチマークを持った社会あれば、従来のウォーターフォールを前提としたプロジェクトマネジメントが向きます。一方、何が便利かを模索する社会こそ、従来型のプロジェクトマネジメントを基盤としながらアジャイルを導入・活用することができるのではないでしょうか。
成熟した社会において、プロジェクト・マネジャーの役割はプロジェクトの成功のみならずビジネスへの貢献へと変化しています。その背景には”何が便利か模索すること”をプロジェクト・マネジャーにも期待されているからでしょう。

10.複雑化するサプライチェーン

サプライチェーンの進化のために、敢えてアジャイルとは言わずに、従来型のプロジェクトマネジメントと適応型リーダーシップの組み合わせを必要としている点がポイントではないでしょうか。アジャイルが向かない理由としては、サプライチェーン刷新はプロジェクトの特性上、イテレーションに分割することが容易ではないのが一番の理由と考えられますが、敢えて別の角度から見てみましょう。
プロジェクトを目的の明確さと手段の明確さの2軸で評価すると、サプライチェーン刷新のプロジェクトは、目的は明確で、手段が不明確なプロジェクトに位置づけられます。サプライチェーン刷新はリードタイム短縮やコスト削減など明確な目的を持ちますが、幾重にも重なる刷新が既にされおり、実現のためにはさらなる工夫やイノベーションが求められるためです。
サプライチェーン刷新に限らず、目的は明確で手段が不明確なプロジェクトはどちらかというとアジャイルが向かないようです。実務家の言葉を借りると「アジャイルは無駄なものを作らずに済むだけで、別に早くはない」のです。目的が明確であればそもそも無駄なものを作る懸念は低いでしょう。とはいえ、新しい手段や技術をいち早く取り入れる必要があることや、水平分業が進んだ環境ではサプライチェーン刷新には多くのステークホルダーが関与することから、適応型リーダーシップが求められるのです。

全体を通じて

様々な技術やその活用によって組織や個人は今後も効率化がもたらす様々な影響を受けるでしょう。その影響を機会とするか脅威とするかは、日本においては、少子高齢化の中、労働力が余剰するほどの効率化を果たせるかどうかと、その労働力を新たな価値創造に向けることができるかどうかにかかっているでしょう。ユーザー、ベンダーの垣根なく、この効率化と価値創造の両面を追求する必要があり、そのためには個と組織の適応力の強化が欠かせないのです。
適応型リーダーシップの本質を「正しく見る・正しく考える・正しく行動する」ことだと論じました。この「正しく見る」という点について補足します。送料有料が当たり前の時代に無料にしたAMAZON、個人情報をネットで晒すことがタブーだった時代に誕生したFacebook、試着しないと売れなかった時代にweb販売を始めたZOZO、すべて結果的に正しかったことですが、当時それらは正しくないこととされていたのです。「正しく見る」ということを、将来の正しさを見据える力とするのか、すでに存在する正しさをいち早く正しいと認識できる力とするのか、議論の余地はありますが、「適応型リーダーシップ」の範疇においては後者に留まるのでしょう。

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