なぜ、BtoB営業では、SFA/CRMを十分に活用できないのか?

公開日 2018/10/01

はじめに

SFA/CRMを導入しているお客様から、多くのデータが蓄積されているにも関わらずSFA/CRMをうまく活用できないという声を聞きます。本稿では、BtoB営業においてSFA/CRMを活用できない理由を説明し、具体的な解決策を提示します。

BtoB営業でSFA/CRMを活用できない理由

SFA/CRMを導入し、活動が可視化されたけれど、いざパイプライン分析をしても問題が浮かび上がらないといったことはないでしょうか。また、アプローチ数が少ないからと訪問数を増やしても結局成果に繋がらなかったということはないでしょうか。なぜこのような状況に陥るのでしょうか?

考えられる理由は、SFA/CRMがBtoB営業の特徴を考慮した仕組みになっていないためです。BtoB営業の特徴とは、2つの営業の型を実践しなければならないということです。その型の1つは、効率的に活動していくことで売上を上げていくという型で、「エリア型」と呼んでいます。一方、商談に関わる顧客の関係者が多く、ニーズに対する製品やサービスも多様で、量だけでなく質も問われる型を、「アカウント型」と呼んでいます。その差異を示したものが図1です。

図1.エリア型とアカウント型の違い

例えば、成約の見込みは高いが小規模な商談を積み上げながら、同時に大規模で多くの顧客関係者と関わり、長期に渡る商談も追いかける状況になっていないでしょうか。その2つの型を担う組織が、型ごとに別組織に分かれていればよいのですが、1つの組織の中で実践しなければならないという状況です。1人の営業が2つの型の両方を担っているという状況もよく聞きます。

営業とマネジャーが、売上目標を達成するため、前期実績等から見込める商談は効率的に活動して実績を積み上げ、それだけでは目標に足りないGAPの部分は攻めて成約するという難易度の高い業務を臨機応変に行うことが求められます。しかし2つの型の実践を求められる営業や組織がパイプライン分析を行っても、質の異なる商談や活動が混在しているために、役立つ気づきが得られないのです。ではどのような使い方をすれば、SFA/CRMは活用できるのでしょうか?

SFA/CRM活用の鍵は、「対話すべき商談の抽出」と「メリハリをつけた商談レベル管理」

BtoB営業では、営業とマネジャーが、目標達成のため質(効果)と量(効率)のバランスをとってマネジメントする必要があります。ここでは商談のマネジメントにフォーカスしたSFA/CRMの活用方法をご紹介します。まず始めに、質を高める方法である「対話すべき商談の抽出」について、次にバランスをとるための「メリハリをつけた商談レベル管理」について説明します。

(1)対話すべき商談の抽出

目標に対するGAPを埋めるためには、攻める商談を成約に導かなくてはなりません。特に新規開拓や拡販の商談を成約するためには、営業個人任せにせずに組織的に対応する必要があり、その仕組みとしてSFA/CRMを使うのです。営業もマネジャーも多忙なため全ての商談に時間をかけて話し合う時間はないでしょう。しかし問題のある商談は対話して戦略を練り、成約に繋げなければなりません。その商談を抽出するために、「確度」と「進度」を用います。

直感的に商談の進度が進めば確度はあがると思われますが、たとえば、三社横一線のプレゼンでは、進度は進んでいるが確度は高いとはいえません。また商談の進度が初期段階でもキーパーソンが「御社に頼むよ」と言っていれば確度は高いこともあるでしょう。しかも営業によって確度の判断はバラバラだと聞くことが多くあります。営業とマネジャーが、「確度」と「進度」を正確に同じ認識を持つことが難しいなかで、対話すべき商談を抽出するにはどうすればよいでしょうか?

確度については、営業の主観と客観値を比較して差がある商談を抽出します。客観値とは、商談に関する情報から算出します。営業が、確度が高いと言っていたとしても、意思決定者に会えているか、会っている方は影響力があるか、いますぐに取り組みたいのか、競合でなく自社に依頼したいのか、といった取引関係者情報及びBANT(注1)情報から商談の確度を点数化し、営業が主観で登録した確度と差異があれば、営業とマネジャーが対話を行うのです。

また進度は、営業がフェイズ毎に立てたスケジュール通りに進んでいなければ、対話すべき商談として抽出します。フェイズの定義も組織的に合意しておくことが重要です。見積をだしたとしても、営業が自ら提示した見積と顧客から請われて提示した見積とは意味合いが違います。営業側のプロセスでなく、顧客側の購買プロセスに沿ってフェイズを定義した上で、SFA/CRMでチェックすることで精緻な進度管理ができます。

(2)メリハリをつけた商談レベル管理

また質(効果)と量(効率)のバランスをとるためには、メリハリをつけたマネジメントをすることが必要です。そのためSFA/CRMを使う以前に商談をどのレベルで管理するかを社内で合意しておくことも重要です。新規開拓や拡販を狙う商談と、継続的にとれる見込みの高い商談を画一的に管理するのは非効率です。入力項目も進捗管理も各々に適した方法を営業現場と討議し、納得した上で、SFA/CRMで仕組み化すべきです。その管理方法を整理しないまま、SFA/CRMを導入すると、マネジャーもどうやってマネジメントに使えばよいかが分からず、ただ業務負荷が上がっただけという状況に陥ってしまいます。

SFA/CRMは入力したデータから答えを得られるものと考えるのではなく、目標達成へ向けてメリハリをつけ、攻める商談を成約するために、営業とマネジャーが対話するきっかけづくりに使うことが、我々の考える活用の解決策です。

おわりに

営業力を強化するためには、市場戦略や営業プロセスの標準化、アカウントプランの策定をSFA/CRMに盛り込むべきというご意見もあるかと思います。本稿ではその部分には言及しておりません。それは市場戦略や営業プロセス等は個々の企業により変わるものですが、商談マネジメントはどの企業でも必要であり、わかりやすい部分であることから、そこにフォーカスして記載しました。

BtoB営業では、2つの型を意識して対処するマネジメントが必要となるため、「対話すべき商談の抽出」と「メリハリをつけた商談レベル管理」を行うことが、SFA/CRMを活用するためのひとつの解決策として説明しました。SFA/CRMの活用にお悩みの方に、なにかしらの一助となれば幸いです。

  • (注1) BANT情報は、Budget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(必要性)、Timeframe(導入時期)の頭文字をとった略語。

※本稿には概要のみ記載しております。具体的に何をすべきかなどの詳細は、弊社にお問い合わせ頂くか、以下の書籍を参照ください。

参考文献

  • 河村亨「自ら考え戦略的に動く営業集団をつくる3つのフレームワーク ~戦略実行力を高める、成長型組織のマネジメント~」、(日経BPコンサルティング2015)

 

 

著者プロフィール

下平 真史
下平 真史

パーソルラーニング
コンサルティング部 コンサルタント

営業改革支援やeコマースビジネスの立ち上げを担当し、SIで提供した営業支援機能を、SFA/CRMパッケージとしてプロダクト化し、様々な業界の企業に対し、プリセールス、導入コンサルティング、カスタマイズ要件定義、プロジェクトマネジメントに携わる。現在、SFA/CRMの使用有無に関わらず、営業力強化に対するコンサルティングに従事する。

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