組織開発でチームを強化!人材開発との違いは?

公開日 2018/12/20

組織開発でチームを強化!人材開発との違いは?

「組織開発」というワードが人事領域において注目を集めています。近年、労働人口の減少や働き方の多様化など企業を取り巻く環境は急速に変化しています。さらにIT技術の普及によって対人の会話が減るなどコミュニケーションの仕方も変わってきています。こうしたなか、求められるのは個々人の関係性やかかわり方を重視した組織作りです。今回は新しい労働環境において効果的な「組織開発」について、仕組みや目的などをご紹介しましょう。

組織開発とは何か

現在、ビジネスシーンにおいて注目されている「組織開発(OD:Organization Development)」は、北米などを中心に1950年代から発展してきました。組織開発は、個人と個人の関係性を重視して、組織を活性化させる取り組みです。

組織開発が注目されている背景には、働き方の急激な変化が影響しています。日本の社会では、新卒で会社に入社すると、途中で転職することなく定年まで同じ企業にいることが当たり前とされてきました。そのため、おおむね同じような考え方や企業風土を共有するメンバーで組織が構成され、個々人の価値観のズレは少なく、あまり問題にならなかったようです。

しかし、現代では自分のスキルや能力を正当に評価されることを求める動き、さらには自分を高める機会をもとめて職あるいは職場を変わることも稀なことではなくなり、組織内外の人の入れ替わりも多くなりました。さらには外国人を採用するケースや女性雇用も多くなったことで、組織における人材や価値観の多様性が増しています。

コミュニケーションの取り方にも変化があり、IT技術の進展や普及によって、直接会話することや電話をするという方法から、チャットツールやメールなど文字のみでのやり取りが主流になっています。

このような変化によって、多様な価値観を持つ個人間の「関係性」を、組織としてどのように結び付けて対応していくかが重要な課題となっています。そこで、この関係性の強化や改善によって組織を活性化させることを目的とした、組織開発に注目が集まっています。

人材開発との違い

似たような言葉で「人材開発」という言葉があります。組織開発との違いは、アプローチの仕方と言えるでしょう。組織開発におけるアプローチは人と人との関係性に着目しますが、人材開発では個人に着目します。人材開発では個人の足りないスキルや経験などに対し、研修などで対策を講じることで能力の底上げを狙います。それに対して組織開発では、個人の能力ではなく、例えば部下と上司、チーム内のメンバー同士などの関係性に焦点を当て、組織のなかで何が問題なのかを考えて改善するのです。

組織開発で何を開発するのか?

では、組織開発で一体何を開発するのか、その目的を見ていきましょう。

企業は「優秀な人材がたくさんいるのに、それを生かせていない」「業務の効率化が図れていない」など、さまざまな問題を抱えているケースが少なくありません。そのように組織がうまく機能しない要因は、組織のなかで信頼関係が築き上げられていないことが考えられます。

信頼関係がない状態であれば、メンバーの組織へのコミットメントが希薄になってしまい、それぞれが個人のステップアップやキャリアアップにしか興味を示さなくなってしまいます。そうなると、組織力を最大限に発揮することが難しくなるでしょう。

組織の力を最大化するためには、組織全体で同じ方向を向き、ひとつの目標に向かって進もうとする意思が大切です。そして、メンバーが同じ方向に向くためには一緒に働くメンバーとともに、戦略の中身やプロセス、目標や課題を共有することが大切です。また、メンバーに対して「自分ごと化」を促し、それぞれのメンバー間の関係性を強化しなくてはなりません。

組織開発の取り組みでは、個々のモチベーションだけを上げるのではなく、組織へのコミットメントを強めて、組織全体の生産性やモチベーションを上げることに注力する必要があります。

組織を開発するためのプロセス

組織開発のためにはプロセスがあります。プロセスというのは、物事を進める手順や過程、目標達成までの進め方を意味します。マサチューセッツ工科大学の補佐教授で組織開発の権威として知られた故リチャード・ベッカード氏の定義によると、組織開発には下記の7つのプロセスがあるそうです。これは会社という大きな組織だけでなく、営業のような部署単位の組織開発にも当てはめられるでしょう。

  1. 計画に基づく
    「何を、いつまでに、どのような状態にしたいのか」を明確にする必要があります。漠然と目標の設定をするのではなく、細かく設定しましょう。
  2. 組織全体にかかわる努力をする
    はじめは組織全体ではなく、小規模で行います。小さくはじめて徐々に全体に働きかけていきましょう。
  3. トップ主導でマネジメント
    組織のトップが組織開発に積極的に関わり、企業理念や会社の目標などのメッセージを発信し、組織全体で共有していきます。
  4. 組織の有効性・健康を高める
    メッセージの発信と共有を進めることで、トップと下部組織の関係性が強まり組織全体としての機能性や有効性が高まります。会社全体で同じ方向を向くことで、経営者は下部組織が必要としている支援が見えて、次の行動も起こしやすくなります。
  5. 行動科学の知識を活用して
    組織開発は長期的なもので、その継続と成功のためには、変革に対して強い志を持った「協力者」が欠かせません。目標達成に向けて、率先して行動してくれる人材を「巻き込む」ことが重要です。現場において変革への動機付けや方向性、取り組みについての議論など、積極的に組織にコミットしてもらうことが大切です。
  6. 各プロセスにおける微調整
    組織開発は長期的な取り組みが必要で、その中で適時効果を確かめる必要があります。うまく機能していない部分や目標との乖離が大きかった場合には、その理由を分析して目標を再設定しなければなりません。
  7. 計画的介入
    目標の結果を共有することが重要です。共有することでメンバーに成果を実感させ、さらなるモチベーションの向上にもつなげられるでしょう。

長期的に一貫したビジョンを掲げ、上記のプロセスに取り組むことがメンバーの信頼関係を高め、組織開発を成功させることにつながるでしょう。

まとめ

今後はさらなるITの発展により、働き方や雇用形態はますます多様化・複雑化していくでしょう。企業が存続し成功するためには、そのような状況下でいかに組織力を強化していくかが重要になってきます。特にチームを強化してパフォーマンスを高める営業組織においては、多様な人材の関係性に着目した「組織開発」への取り組みが鍵を握ることになるでしょう。

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