BtoBの営業力強化を3つの視点で見直す

公開日 2017/08/15

セミナー開催日:2017年7月3日(月)

 

弊社グローバルパートナーにの営業力強化調査によると、高い成果をあげる営業組織では、マーケティングと営業を連動させ、CRMなどのデータを戦略強化に活用しています。

本セミナーは、BtoBウェブマーケティングで200以上のプロジェクト実績がある「株式会社ウィット」と、日本最大級のデータベースによる顧客データ基盤を持つ「株式会社ランドスケイプ」、25年以上にわたり営業力強化分野でお客さまのご支援をして参りました弊社との3社共同で開催いたしました。

BtoBの営業力強化を「ウェブマーケティングからリードを増やす」「インサイドセールスから商談を増やす」「営業が動き、成果を挙げるリードマネジメントの要諦」という3つの視点で見直すヒントをご提供いたします。

【第一部】ウェブサイトからリードを増やす

講師プロフィール

株式会社ウィット 代表取締役 渥美英紀氏

BtoBのさまざまな業界の売上アップ・ブランド強化・営業改善など200以上のプロジェクトを担当。特にリード獲得や売上アップに高い成功確率を誇り、2009年にノウハウをまとめた『ウェブ営業力』(翔泳社)を執筆、2011年に『Webマーケティング基礎講座』(翔泳社)を共著にて出版。アクセスログ解析システム、メール配信システムなどの開発も手掛けたことから、ウェブマーケティングの遂行に必要不可欠かつ広範囲な分野について専門性を活かした“総合的”かつ“現場に根ざした”ウェブマーケティング支援を得意とする。

ウェブサイトのリードを獲得するのは、コストをかければ決して難しくない時代になりました。しかし、ただリードを増やせばよいわけではありません。質を考えずに不要なリードを増やしても営業部門の手間を増やし全社的に見たときに効果的ではなくなってしまいます。そこで、私が実際に経験したプロジェクトの中から、売り上げに繋がるリード獲得に向けて、気づきの多い事例を選び、ウェブサイトからのリード獲得のポイントを解説したいと思います。

事例1 定番のウェブサイトリニューアル

一つ目は、書籍を書くきっかけになったプロジェクトです。依頼主は受託開発の会社でした。一般的に定番となるウェブサイトのリニューアルは、「集客」「コンテンツ」「問い合わせ窓口」の三つの観点から改善点を検討します。その会社のホームページは全面的な改善が必要であったため、すべての観点から改善を行いました。

まず集客では、リスティング広告を投入しました。狙ったキーワードへの競合も少なく、比較的低コストで効果が期待できました。さらに、プレスリリースの配信や全社メルマガの活用でサイトへの誘導を図りました。一方、ウェブサイト内の改善では、魅力的な事例の追加、デザインの一新、問い合わせフォームの改善等を行い、競合と見比べても遜色のないウェブサイトをつくりました。

定番のウェブサイトリニューアルとは?

これらの施策の結果、問い合わせ数は月平均で4倍に増加しました。しかし、数ヶ月経っても売上につながってきません。定番となるリニューアルの作戦を実行し、ウェブサイトとしては十分な成果を上げたにも関わらず、肝心な売上にはつながりませんでした。

原因調査をすると、二つの問題点が見えてきました。一つは、問い合わせの見込み度が判別しにくいことです。「資料が欲しい」「見積りをくれ」といった内容では商談の見込み度がわかりません。そこで、営業部長は新人をヒアリングに行かせていました。経験の浅い新人が現場で根掘り葉掘り聞く。問い合わせをした会社側からすれば最悪です。案の定、商談の多くが失敗に終わっていました。

もう一つは営業個人で見たリストの優先度です。この会社ではグループ会社からの紹介が最優先であり、次に既存顧客、展示会のフォローと続き、ウェブサイトからの問い合わせは4番目でした。優先度の低い問い合わせが4倍に増えることで、むしろおざなりな対応になっていたのです。

営業が扱いやすい問い合わせでなければ、いくらウェブサイトからのリードを増やしても有効活用されません。ウェブサイトを作る前に、まずは営業現場が困っていること明確にし、その課題に対してウェブサイトをどう活用できるかを考えることが重要だということを教えられました。

事例2 ウェブサイトからのリードを推算する

二つ目は、内装の設計・デザインを行う会社の事例です。ウェブサイトからの問い合わせが月10件来るようにしたいという要望でした。この会社は過去の実績が豊富であり、事例を多く持っていることが強みでした。そこで、事例集をダウンロード形式で提供することにより、リード獲得を狙うという設計を検討しました。しかし、集客面を調査すると、月4,000回程度しか検索の回数が見込めないことがわかりました。そこから推算される問い合わせ数は、せいぜいその1/1,000、すなわち月4件が上限となります。月10件の目標には到底及びません。

そこで施策の見直しのため、営業へのヒアリングを行っていると、一つのヒントが得られました。発注者は主にデベロッパーです。一つの物件を担当する期間は2〜3年で、それを過ぎると別の物件を担当するそうです。となれば、2〜3年前に接点があったデベロッパーはそろそろ次の物件を担当しており、見込み度が高いのではないか。そんな仮説を立て、営業部門では2年以上前の名刺を掘り起こしてもらいました。約2,300枚の名刺が集まり、それらに宛てて最新事例の案内を私信メールで送ることにしました。

今、通常のメルマガ配信では効果が得られにくい時代です。一般的なクリック率は3~5%程度で、2,300件に一斉配信で送ると、約100件のクリックしか期待できません。そこで初回のみ、営業担当から挨拶文を添えた案内を私信で送ってもらったところ、クリック率65%、約1,600名から反応を得ました。さらに、月30件の商談が発生し、リニューアルを成功に導くことができました。

ウェブサイトは打ち出の小槌ではありません。集客の可能性を算出し、目標とする集客が現実的でないのであれば、別の適切な集客方法を考えなければなりません。自社の営業プロセスをよく理解し、ウェブマーケティングが活躍できる領域を見極めることが重要です。

事例3 営業との連携を洞察する

三つ目は、営業にどのようなデータを渡すべきかという難しさを考えさせられたケースです。あるメーカーから顧客の囲い込みをしたいという依頼を受けました。この会社は特定分野でトップシェアを取っており、すでに2万件のアドレスを獲得していました。そこで、会員サイトに登録した人には最新CADデータを提供するという形で囲い込みを行い、さらに、新製品のサンプル貸し出し等の問い合わせ窓口を設け新たな商談を獲得できるようにしました。

実際、データはたくさん集まり、ウェブサイトとしてはうまく行きました。しかし、営業部長から言われたのは、「昔はもっとわかりやすかった」という言葉でした。その営業部長は年末の最終営業日に「生きたカニ」を買って顧客回りをしていたそうです。すると、キーマンと直接会うことができ、雑談を通じて年間の営業計画を立てることができたといいます。今は、メールアドレスになってキーマンがわからなくなり、アクセスログでは営業計画は立てられないといいます。データは豊富にあるものの、営業計画に使えるようなデータではないことを指摘されました。

営業にとって価値のある情報は、予算・権限・要望・時期の頭文字を取って「BANT」です。このBANT情報がなければ、営業部長はエースを行かせるか、新人を行かせるか判断できません。

ここで気づかされたのは、今あるデータの利用を考えることよりも、営業価値のあるデータをどう生み出すかの方が大事だということです。よりBANT情報に迫るにはどうすればよいか?営業との密な連携を図り、獲得したい情報を得るためにウェブサイトを設計する必要があります。

事例4 問い合わせ窓口の改善

最後に、サイト内の改善だけでリードを増やすことができた例を紹介します。

そのウェブサイトをIP情報からどんな企業が来ているのか分析したところ、事前の予想に反して既存顧客よりも新規顧客が多いことがわかりました。つまり、サイトに顧客は一定数来ているものの顕在化できていないという課題を持ったケースです。その場合、問い合わせ窓口の改善が最も重要なポイントになります。ウェブサイトの企業の場合、総合問い合わせが1つ置かれているだけのホームページがよくあります。これは、お客様からすると曖昧であるため、問い合わせの障壁になります。たとえばこれを「ダウンロード」「カタログ請求」「価格お問合せ」「ご相談・ご依頼」といった具合にラインナップを分けると、わかりやすくなるとともに、あらゆる検討段階のお客様に対応できるようになり問い合わせ率が高まります。さらに、フォームごとに設問を最適化することで、顧客からの情報が得られやすくなり、しいては営業に価値のあるBANT情報により迫ることができます。

まとめ

ウェブサイトからのリードを増やす【振り返りのチェックリスト】

定番のウェブサイトリニューアルでリードを増やすこと自体はさほど難しいことではありません。さらに先を見越して、営業に価値の高い情報を供給できるウェブマーケティングを展開するために、事例での学びを自社にあてはめ振り返る機会にしていただければと思います。

【第二部】インサイドセールスから商談を増やす

講師プロフィール

株式会社ランドスケイプ 営業部 マネジャー 樋代周平氏

データベースマーケティング支援およびCRMコンサルティングに従事。製造業、電気通信業を中心に様々なBtoB企業に対して、データ統合、データを活用したBtoB市場開拓マーケティング、CRMコンサルティングなどを提供する。

ランドスケイプからは、顧客育成に欠かせない「顧客データ一元管理」のポイントと、当社で取り組んでいる「インサイドセールス」の事例を紹介します。

マーケティングオートメーション(MA)/営業支援ツール(SFA)導入における課題

顧客の管理/育成を推進するためにマーケティングオートメーション(MA)/営業支援ツール(SFA)を導入する企業が昨今増加しています。しかし上手く使いこなせていない。そんな悩みを抱える企業も同時に増えています。

たとえば、よくあるのがこんなケースです。社内にある分散したデータを新しく導入したMAやSFAといったツールにとりあえず入れてしまう。すると、MAやSFAの内部でデータ重複が起こり、適切な管理や分析が難しくなるというケースです。この企業情報の重複は、社名の表記揺れ、統合・被合併、住所移転など変化により容易に引き起こされます。

MAは顧客の行動情報の管理に適しているツールです。その為、顧客育成によく使用されます。そのMA活用における課題について考えてみましょう。

たとえば、MA内に取り込んだお客様に一斉配信でメールが届けたが、関心のないお客様にはスルー、または配信拒否をされてしまう。結果、レスポンスがどんどん低下し、せっかく獲得した名刺が有効活用できない……。という課題です。名刺情報だけではわからない企業属性の情報がこの問題を解決します。業種や企業規模で絞り込み、紹介する商材・サービスによって、狙いたい業種や規模をセグメントすることが重要です。

この問題を解決するために、ランドスケイプが提供しているのが、企業情報マスター「LBC」、およびデータ統合ツール「uSonar」です。LBCは全国820万件の事業所データを独自に構築しています。一企業ごとに個別の1レコードを割り振って管理をしています。またその企業の年商、業種などの属性情報を保有しています。

uSonar」はこのLBCの情報を内包しているデータ統合ツールです。MA/SFA内部の情報、名刺管理ツールの情報、基幹システムの売上情報などを、データ統合ツールuSonarを使って一元化することによって、企業を一意のレコードで管理し、重複を解消。また、属性情報を用いてセグメンテーションを可能にします。

そこで、実際にどのようにして商談を増やすのか、MA/SFA、データ統合ツールuSonarを活用して取り組んでいるランドスケイプのインサイドセールス事例を説明します。

ランドスケイプのマーケティングプロセス

株式会社ランドスケイプ 高岡亮氏

ランドスケイプでは顧客分析を行い、当社のサービスを受注可能な企業を売上高、利益を軸に絞っています。売上高、利益はuSonarで自動的に仕分けをします。該当する企業については、ニーズと時期が明確なものは営業へ、残りはインサイドセールスで育成します。また営業が企業を訪問したとき、時期が今ではないという案件には、インサイドセールスで預かるというプロセスをつくっています。

CDIを実現させる仕組み

ランドスケイプのインサイドセールス

ランドスケイプでは、見込み客から商談をつくり営業部に引き渡す活動をインサイドセールスとしています。2016年7月から開始し、当初の目標は、営業商談総数の10%、月50件の商談創出としました。しかし、立ち上げ早々、躓いてしまいます。

インサイドセールスでは、営業部が効率的な活動ができるように、BANT情報(予算・権限・要望・時期の頭文字)に踏み込んで情報取得をする必要があります。これはウェブでは収集できないため、電話で教えてもらうという工数をかけなければなりません。早速展示会で名刺を交換した会社に電話をしました。しかしお客様からすると、ランドスケイプが何の会社か、何の目的で電話してきたのかわからない。当然、お客様に迷惑をかける結果となりました。

そこで参考にした書籍が「インサイドセールスの実務注記」です。書籍によると、インサイドセールスを行うならば最低限押さえておくべき3つのステップがあるといいます。それは(1)情報提供→(2)情報取得→(3)提案で行うことです。私たちの失敗は、関係構築をする前に、いきなり(2)情報取得や(3)提案をしたことにありました。

『インサイドセールスの実務とは?』 3つのステップ

では、この三つのステップをどのように実行していくか。その取り組みを紹介していきます。書籍の通り、まずはお客様へお役立ち情報を提供することで信頼形成を図ることにしました。例えば本などから得た知見を、4~5通のメールにまとめ、週1回の配信で約4〜5週間配信します。そして、お客様に認知されたタイミングで、ステップ2として関連セミナーのメルマガを配信します。

メールの内容も相手企業に合わせて配信しました。MAのメリットは、ウェブサイトの足跡情報をキーにして、自動的にリターゲティングメールを配信できることです。また、名刺情報をLBC情報と照合すれば、業種別、資本系列別にメールマーケティングが展開できます。さらに電話で取得した情報をメールの件名に使うことも効果的です。

関係が出来上がった相手にようやくBANT情報を取得するための電話活動です。電話活動においても三つポイントがあります。

一つ目はセグメンテーションです。情報提供をするときの話題づくりに関して一定の質が担保できます。

二つ目が履歴管理。電話のやりとりから取得した情報、提供した情報を履歴として残しておくことで、インサイドセールスの効率が上がります。

三つ目が均一化です。私たちは社員が中心に電話活動を行っていますが、企業によってはアルバイトを雇うケースもあるでしょう。その場合、オペレーターのアウトプットのレベルを均一化しておく必要があります。

最後に実績報告です。当初、目標とした月50件は全く達成できませんでしたが、2017年3月の実績で月商談数の2割にあたる101件を営業に引き渡すことができました。

冒頭話したように、インサイドセールスのポイントは、顧客データの一元化とセグメンテーションです。そのとき、企業単位でまとめること、そして属性を使うことで、効果につながるということを再度強調しておきます。

  • ※注記 沼澤拓也著「インサイドセールスの実務―売上を3倍に増やす驚異の営業支援システム」東洋経済新報社 (2013)

【第三部】営業が動き、成果をあげるリードマネジメントの要諦

講師プロフィール

当社 シニアコンサルタント 河村享

1990年、機械商社を経て、富士ゼロックス総合教育研究所(現パーソルラーニング)に入社。外部一般企業や富士ゼロックスグループに対する営業力強化を中心とした企画提案を実施。2004年よりSFA定着を含む、営業成果を創出するためのシステム、精度、教育の一貫コンサルティング事業に従事。2009年より、特に「戦略実行」をテーマに、経営⇔現場、営業⇔関連部門を“つなぐ”組織変革支援コンサルティングを展開、現在に至る。

ウェブから、イベントから、アフターサービスの現場から、新規案件(顧客)を獲得するために企業はさまざまな施策を講じてリード情報を確保します。しかし、連携が上手くいかず(最終的に“刈取る”はずの営業が動かず)費用に見合う成果が上がらないばかりか「もっと精度の高い(確実に決まる)リードをちょうだいよ!」と営業から“逆切れ”されてしまう。これは営業が悪いわけではありません、リードから商談管理へと続く「戦略」と「巻き込むしくみ」の問題なのです。十数年に渡り「戦略実行」を支援してきた弊社実績より、こういった問題状況について考察していきます。

BtoBにおけるリードマネジメント

リードマネジメントというと、何を思い浮かべるでしょうか。マーケティング部門であれば、おそらくエリア型営業を考えるのではないかと思います。エリア型とは市場を面として捉え、広く情報を収拾し、引きがあったところを早期に刈り取る。そのようなイメージです。しかし、営業部門の見方は少し違います。成熟した市場環境、しかもB to B業界においては、見かけ上はエリア型であっても、実質的にはアカウント型営業であることがよくあります。

アカウント型営業とは、数社の重要顧客と長く取引を行い、売上を最大化していく営業活動です。マーケティングと営業の連携がときどき上手く行かないのは、リードマネジメントの捉え方にこうしたズレがあることが原因の一つではないかと私は考えています。

とはいえ、どんなリードであっても、それをしっかり受け取って現場を走るのが、営業の役割です。まずは受け取ったリードを、長期的に追いかけたい魅力的なリードか、すぐに刈り取らなければいけないリードなのか見極めなければなりません。

今回、私が焦点を当てたいのは、長期的に追いかけたいリード、更に言えば、追いかけるリードだけでなく、リードを一つのきっかけとして、長期的に開拓・拡大しなければいけない顧客についてです。購買力のポテンシャルは大きいが、自社のシェアは低く、攻めがいがある。そんな顧客やリードをどのように攻略していくかについて説明します。

アカウント型営業の活動内容

アカウント型営業には、案件対応の活動と関係構築の活動があり、二つの活動をバランス良く行っていかなければなりません。中でも長期的に育てたいリードに対しては、関係を構築しながら案件を生み出していく活動が必要です。

お客様の中のどこに、どのような新しい需要があるのか、それを示すのが企業内ホワイトエリアです。「本来、自社とお取引いただきたい」が「他社に取られている」、又は「お客様自身が気付いていない」といったケースが想定されます。新しい需要への対応としては、既存部門での新製品やサービスの拡張、他社製品から自社製品への置き換え、新規部門の開拓があります。案件はお客様起点で発生する場合もあれば、自分から提案を仕掛けていく場合もあるでしょう。一番難度が高いのが、お客様の気付いていない新規の需要を売り手の側から創造することです。

さて、新規のリードが来たとき、どうするか。数字に厳しい会社の場合、営業は新規のリード(特に新規顧客からのリード)に「貪欲に飛びつく」と思われがちですが、実際は逆のことが起きたりします。数字に厳しい会社ほど、現場の営業は短期的な売上を優先し、受注確度が曖昧な新規顧客のリードを放置していることがよくあります。そうすると新規の需要は開拓されず、シェア拡大の機会も失われてしまいます。直近の数字の達成度とは別に、必ず一定の工数を割き長期的な取引をつくるための仕掛けをしていかなければなりません。

アカウントプランを立てる

私たちは、長期的に取引を拡大したい顧客に対してアカウントプランを立てることを提案しています。アカウントプランは重要顧客に対する攻略計画です。アカウントプランをつくるときのポイントを以下に示します。

  1. 3C情報(顧客、顧客の顧客、顧客の競争相手)を捉えた上で、顧客の戦略・事業課題を把握する。
  2. 企業内ホワイトエリアを明確化する。
  3. ホワイトエリア内の主要プレイヤー(意思決定者)情報を整理する。
  4. ホワイトエリアで発生する取引の仮説を立てる。
顧(個)客レベルのマネジメント

アカウントプランをつくったら、必要に応じて仮説を仕掛け案件として登録します。そして、顧客にアプローチをかけて、そのテーマで継続的に面談が出来るようであれば、それを見込み案件として登録し、さらに追求していくという流れをつくります。こうした一連の流れを管理していくのが営業部門で行う長期的なリードマネジメントです。

リード情報を活用する

ところで、マーケティング部門からリードを渡されたとき、営業部門はそれが確実に決まるホットなリードかどうかを気にかけます。しかし、ホットかコールドかということと、長期的に開拓・拡大しなければいけない顧客かどうかは関係ありません。開拓・拡大すべき重要な顧客からのリードであれば、それがコールドであっても仕掛けていかなければならないのです。リード攻略のための戦略を立て、どこに、何を、どのタイミングで仕掛けるか、営業部門できちんとデザインする。そのためにマーケティング部門と連携し、リード情報を最大限に活用していくことが大切です。たとえば、そのリード情報が直接取引のない部門ものであっても、何らかの情報交換が出来れば、会社が抱える経営上の課題についてヒントが得られるかもしれません。魅力度の高い顧客を長期的に攻略するとき、ムダな情報はないのです。

営業に自己決定させる

もう一つ、リードマネジメントで重要なことがあります。それは営業担当の自己決定です。先ほど、受け取ったリードが、長期的に追いかけるべきリードか、そうでないのか見極めることが必要だと話しました。その見極めを営業自身にさせるのです。なぜならば、アカウント型営業では、営業の自己決定によるコミットメントを引き出すことが、成果を出す上で重要になるからです。

正確に言うと自己決定すればどのような決定でも良いというわけではなく、フレームワーク(考え方の枠組み)に沿って自己決定をさせ、本来あるべき目標に近いところに着地(決定)をしてもらいます。その自己決定には二つあり、一つが今話した顧客のターゲティングです。営業は規模が小さくてもシェアを取っていればお得意様だと思い、活動をそこに集中させがちです。そこで、本当に攻めるべき顧客(規模が大きく、ホワイトエリアが広い)に意識を向けさせるのです。もう一つは、営業活動プロセスの中での自己決定です。私たちは、アカウントプランをもとに案件攻略シナリオをつくることを提案しています。シナリオにはアプローチ、課題共有、提案、受注、フォローといった項目で活動プロセスが書き込まれます。

たとえば、受注予定日を○月×日に決めたとする。そこから逆算していつまでに担当部署の合意を得るか、いつまでにキーマンとの面談を設定するかといった受注までにクリアすべきキーイベントを、達成期日とともにシナリオに入れていきます。こうした活動プロセスは、フレームワークと推奨される標準的なリードタイムによってある程度まで自動的に設定できます。しかし、お客様によって期日までのリードタイムが違ったり、案件を進める中で要らないキーイベントが出てきたり、修正を加える必要が生じます。そのとき、営業が自分で判断し、直しを入れていく。そこに自己決定の要素が入るわけです。

納得感とやりがいを持たせる

自己決定を重視するのは、「あえて思考させることによってやるべきことの本質的意味合いを理解」することで、「自分が決めたことだから最後までやり遂げる」という意思を営業に持たせるためです。ただ一律に「リードを追え」と言ったり、計画の遅れを責め立てたりしていたときよりも、指示に対する納得感や、やりがいが上がったという調査結果が実際に出ています。仕事である以上、誰もが満足するマネジメントはないかもしれません。しかし、少しでも納得感ややりがいがあった方がよく、成果にも影響を与えるはずです。そのためには、きちんとした(圧倒的な論理性に基づく)フレームワークと、日常の中で自己決定が促される「しくみ」が必要になります。

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