リーダーシップの源泉、「パーソナリティ」の重要性

公開日 2014/08/06

2回シリーズで、自分のパーソナリティからリーダーシップスタイルを探るアプローチについて考えていきます。1回目のテーマは『リーダーシップの源泉、「パーソナリティ」の重要性』です。

昨今、国境を越えて地球上、どこでも誰とでも成果を出せるリーダーの採用や育成が求められる中、グローバル基準との比較で、個人の適性や行動特性を客観的に捉える必要性が増してきています。個人においても今まで接したことのないような多様な価値観やノウハウ、経験を持った人と協働しながら成果を出していく機会が増えてきており、改めて自分自身を見つめ直し、コアとなる自分の強みや大事にしている価値観を認識することが以前にも増して求められてきているように思います。

ここでは、なぜ自分はリーダーとしてその行動をとるのか、その行動の背景にあるパーソナリティに着目して、自己理解を深めるテストHOGAN ASSESSMENT(ホーガン・アセスメント)の考え方をご紹介します。

先が見えない不確実性の時代だからこそ求められる、ゆるぎない自分の「パーソナリティ」をどのような方法で捉えたら良いのか、これからのご自身のリーダーシップスタイルを考える際の一助になれば幸いです。

リーダーシップ強化のための自己理解テスト

皆さんはどんなときにどのような方法で自己分析をしますか?

自己分析の目的は人によってそれぞれだと思います。就活、転職、異動といったキャリア開発から職場でのリーダーシップの発揮、自己啓発、婚活にいたるまで、ライフステージによって、目的は変わりますが、どんな目的であっても自分のことを客観的に把握して損することはありません。

また世の中には自己分析ツールが数多く存在します。それぞれ背景にある理論やモデルは異なり、Web上で回答できるものから、専門家による結果の解説が必要なものまで、手法も各種あります。分析結果がしっくりくる、こないというテストとの相性によって、評価や好みがはっきり分かれるのも自己分析ツールの特徴だと思います。

今回ご紹介するHOGAN ASSESSMENTは、米国ホーガンアセスメントシステムズ社(以下、ホーガン社)がリーダーシップ強化に向けて開発した自己理解テストです。なぜパーソナリティが重要か、パーソナリティをどのように捉えて自己分析をするのか、その概要をご紹介します。

なぜパーソナリティを重視するのか

HOGAN ASSESSMENTでは、リーダーがとる行動の背景にあるパーソナリティに着目します。

たとえば、上位ポジションや権力にそれほど関心がなかったり、論理的にものごとをとらえるのが苦手だったり、人とコミュニケーションをとるよりは、自己完結してできる仕事を好む人が、リーダーとなってメンバーを率いた場合、どうなるでしょうか。リーダーに期待される役割や業務をまっとうできずに本人が苦しむだけでなく、メンバーのモチベーションが下がって、チームの生産性が低下することは容易に想像されます。

このように、リーダーが新しい役割の要求にこたえられない、あるいはチームメンバーと関係性を築いて成果をあげることができない、結果を出せない、といった壁に直面する要因は、リーダー自身のパーソナリティに起因するものが多いと考えます。

いかに人をリードするか、リーダーシップの発揮を決定づける中心的役割を果たす重要なものとして、パーソナリティを位置づけ、そのパーソナリティを2つに分けて捉えます。

パーソナリティの2つの捉え方

1つは自分が自身をどうみるか、あるいは他者にどうみられたいか、「自己評価(Identity)」と称される“内面”からみたものと、もう1つは、他者があなたをどうみるか、「他者評価(Reputation)」と称される“外面”からみたものです。

HOGAN ASSESSMENTでは、特に「他者評価」に着目して、リーダーとしてのパフォーマンスを予測します。普段、どのように他者と関わり、どのように人をリードしているか、あるいはプレッシャーがかかったり、追い込まれたときはどうするか、という平常時とそうではないときの自分について、他者の目を通して把握します。

パーソナリティの具体的なイメージをもっていただくために、ご参考までにHOGAN ASSESSMENTのスケールの一部をご紹介します。

  • 普段の自分の強み、弱み
     適応性、大望野心、社交性、慎重性、好奇心などの7つのスケールで測定します。ものごとを判断したり、人を巻き込んだり、出世したりする行動の背景に何があるのか、自分のパーソナリティ上の強み、弱みを認識します。
  • プレッシャー時のリスク
     興奮しやすい、懐疑的、用心深い、傲慢、など11のスケールで測定し、キャリアを踏み外しかねないリスクを認識します。
  • 動機づけとなる価値観
     認知欲求、権力志向、安全欲求、営利志向、科学志向など、パーソナリティにプラスして価値観を10のスケールで測定します。自分の関心、動機づけとなる価値観を知ることにより、組織や仕事との適合を認識します。

    以上、28のスケールで自分のリーダーシップスタイルを捉えます。

自己理解の方法:「自己評価」と「他者評価」

なぜ自分を理解する上で「他者評価」が重要なのでしょうか。

実際、昇進を判断し、候補者を推薦する上司は、業績以上に周囲の本人に対する「他者評価」を気にするでしょうし、マイナスの「他者評価」は、メンバーや同僚からの信用を失いかねません。今や口コミや他人のレビューを見聞きしてから、買う物や食べるものを選択するのと同じように、人のことも自分の目で見て確かめる前に、他人の「評価」のフィルターを通して判断する場面が増えてきているように思います。

皆さんは自分自身に対する「他者評価」をどこまで把握されていますか?

自分のことは自分が一番よく知っていると思いがちですが、HOGAN ASSESSMENTでは、「自己評価」と「他者評価」が一致することは少なく、そのギャップ認識の欠如が本人の評判を落とし、キャリアにマイナスの影響を及ぼすと考えます。

「360度評価の結果を分析すると、たいていの人は、全体的に自分のことを有利に評価する一方で、上司や同僚、チームメンバーは本人とは違ったそれも一貫した見方をしている」とホーガン社の商品調査 シニアマネジャー ブレイン ガディス氏(Dr. Blaine Gaddis)は調査報告書「Who Are You?」の中で指摘しています。

言いかえれば、自分はリーダーとしてこう見られたいと思って行動しても、人は自分が望むようには見ていない、見られていないことの方が多いと考えた方が賢明ということではないでしょうか。多面診断や行動評価などで、他者評価と自己認識とのギャップに驚いた経験はありませんか。

HOGAN ASSESSMENTでは、他者から見た自分のパーソナリティについて突きつけられ、自己認識とのギャップを大小問わず認識させられます。強みと思っていたことが、他者からは弱みに見えていたり、自分の限界と思っていたことが他者からは強みに見えていたり、これまで気づいていなかった強み弱みをはじめて知るということもあります。

これから求められる役割や、自分が希望するキャリアの中で、目指すリーダーシップを発揮するためにも、まずは、自分のパーソナリティについて周囲の声に耳を傾けることから始めてはいかがですか。

「皆さんから見て自分はどう見えていますか?余裕がなくなったときは、どうですか?私の強みや弱みはどこにありますか?」と、上司やチームメンバーに一度聞いてみてください。今まで気づいていなかった自分を発見できるかもしれません。更に自分自身を深く知ることで、他者の強みや弱みを見る目も変わって、これまでとは違う関わり方ができるようになるかもしれません。

今回は、自分のリーダーシップスタイルを知る方法として、行動の背景にあるパーソナリティを「他者評価」と「自己評価」とのギャップから認識するアプローチをご紹介しました。

次回は、ホーガン社が調査したリーダーシップについてご紹介します。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2014年8月6日)のものです。

※本コラム原稿はNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が運営する「Bizコンパス」に掲載されました。

著者プロフィール

山本 実

HOGAN ASSESSMENT Master Certified Feedback Coach /認定シニアアクションラーニングコーチ

IT系シンクタンクでの業務改革コンサルティングを経て、2001年より、パーソルラーニングにて、人材開発のコンサルティングを中心に、人材育成やキャリア開発の仕組み作り、その運用・定着支援に従事。また、戦略の実行力を高める組織開発プログラムや、グローバルパートナー(米国)のリーダーシッププログラムを開発。現在、ファシリテータをしながら変革リーダーの育成ソリューションの展開を推進している。

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