ネット時代にふさわしいフラットな人間関係の経営組織とは

ネット時代にふさわしいフラットな人間関係の経営組織とは

2020年2月7日

朝尾 直太
株式会社オープンパワー 代表取締役 / 一般社団法人自然(じねん)経営研究会 理事

朝尾 直太

経営はこれまでのスタイルのままでよいのでしょうか? インターネットが当たり前になり、誰もがスマホを持つ時代。コミュニケーションのしかたは大きく変わりました。ビジネスモデルも劇変しつつあります。ところが経営組織やマネジメントスタイルはどれほど変わったでしょうか。変革はこれからです。私は、人間性を重視する方向に変革が進むと考えています。

このコラムでは、インターネット技術、社会や働く人の意識の変化によって、これからの経営組織がどのように変わっていくのかについて、ひとつの方向性をご提示し、読者の皆様と共に考えていきます。

【目次】

  • 階層型組織は、資本の論理に偏りやすい
  • 自律分散型組織は人間性を回復させる
  • 背景にITの進化
  • 自律分散型組織の課題は「人」

階層型組織は、資本の論理に偏りやすい

今主流の企業形態は「階層型組織」の株式会社です。20世紀前半に大量生産型の事業に対応するために発達した組織形態が、今も主流の地位を占めています。すでに大量生産時代の時代は終わったと言われて久しいのに、です。

階層型組織の株式会社には、株主による資本の論理に偏りやすい傾向があります。経済を重視する社会の風潮と相まって、経営を過度に経済性(お金儲け)重視に傾かせています。その結果、ご存知の通り、世の中のあちらこちらにひずみが目立っています。

階層型組織の特徴

まず、その名の通り、経営陣をトップとした階層構造を持っています。上位の階層が意思決定を担い、下位の現場が実行する、というのが基本です。外部の経営環境に関する情報を集め、意思決定するのは経営陣(マネジメント層)の仕事です。 もう一つの特徴は、業務を専門化して分業する点です。製造、販売(営業)、開発、管理といった機能別に部門を分け、専門分化して業務を行います。

こうした組織にはメリットがあります。 少数の人の意思決定で多数の人が動くので、組織を大規模化しやすくなります。また現場で働く人にとっても、専門業務に特化すればよいのでスキルを高めやすくなります。この二つが組み合わさると生産性が高まります。

しかしデメリットもあります。 まず、資本の論理の影響を受けやすい点です。経営陣=取締役とすると、株主が選ぶ取締役に意思決定の権限が集中しているからです。株主や経営陣の取り分が優先され、現場に近い方の社員の取り分が減らされやすくなります。立場の弱い仕入先などにしわ寄せが行くこともあります。

次に、個々の従業員が、会社の他部門の人や外の社会とのつながりを実感しにくくなる点です。専門業務に特化するために仕事が細分化されます。しかも、会社全体の方針や部門間の連係は経営陣・管理職に委ねられているため、担当業務以外の情報が十分に入って来にくくなります。すると細分化された仕事は全体の中での位置づけが見えにくくなり、「断片化」します。こうなると仕事に対するモチベーションを保ちにくくなります。 こうした構造のもとで、いったん会社の収益性が低下すると悪循環が起こります。経営陣は利益を残すために現場の取り分を減らしたり負担を大きくしたりするので、さらにモチベーションを維持しにくくなります。その状況でイノベーションのための創意工夫を求めることができるでしょうか?

自律分散型組織は人間性を回復させる

最近話題の「ティール組織」や「ホラクラシー経営」は、自律分散型と言われます。その最大の特徴は、資本の論理に偏り過ぎず、人間性の方にバランスを取り戻しやすい点だと私は考えます。

自律分散型組織の特徴

まず、意思決定が経営陣に集中しておらず分散されており、実行する人たちが意思決定をします。階層型組織の視点で言うと「現場への権限移譲が進んだ状態」です。

次に、管理する/されるの関係がなくなり、管理的な業務は広く薄く共有されます。専門化による分業はあるものの、それしか関知しないわけではなく、誰もが経営全体に責任を持って関わります。

そうすることによって部分最適に陥らず、組織全体にとって最適な意思決定を、それぞれの現場で行うことができます。株主だけでなく多くの現場の社員などが経営に関わりますから、資本の論理だけに偏りにくくなります。これまでより現場の社員の幸せ、人間性を重視するほうにシフトします。

ただし、これは昔の労働組合のイメージのように、自分たちの都合だけを要求するものとはまったく異なります。組織を経営する一員としての当事者意識を持ち、収益性についても責任を負ったうえでの話です。

私の見立てでは、人間性の方にバランスをシフトしても、株主の経済的リターンが下がるとは限りません。一時的な振れはあっても中長期的には両立しうると考えています。理由は、働き手のモチベーション、事業に対する熱意が高まり、創意工夫が生まれ、製品・サービスの付加価値が高まるからです。先に触れた悪循環とは真逆の状況です。

背景にITの進化

近年、自律分散型組織が注目されるようになった背景にはITの進化があります。自律分散型組織のデメリットの一つは、組織内の情報共有に手間がかかり大規模化しにくい点です。その点では階層型組織の方が有利でした。ところがITの進化によって、情報共有、コミュニケーションのためのコストが劇的に低下しました。

さらに、インターネットに象徴されるように、誰もが情報にアクセスできるようになったおかげで人の意識も変わってきています。情報を一部の人が独占することに違和感を覚えるようになり、フラットな人間関係が当たり前になりつつあります。

自律分散型組織の課題は「人」

とはいえ、情報共有やコミュニケーションのコストが低下しただけで、自律分散型組織がうまくいくわけではありません。実現に向けた課題を挙げておきましょう。

自律分散型組織実現の課題

最大の課題はガバナンスの構造、つまり株主と経営者の関係です。上場企業のように株主と経営者が別であれば、経営者は株主の要求・期待にさらされるので、無理をしてでも利益を残そうとする誘因が働きます。株主にも色々いますが、利益の出にくい時期に信頼関係を保てるかどうかが重要です。他方、オーナー経営の株式会社であれば、オーナー=経営者の考え次第で自律分散型への移行を図れます。

次の課題は経営陣の覚悟です。権限を手放すことになるのはトップだけでなく幹部社員・管理職にまで及びます。報酬や給与水準にも関わることなので時間をかけるとしても、その方向に向かうことは覚悟しておかないといけません。

3つ目は社員の受け止めです。制度やしくみを変えても、人が動かなければうまくいきません。意思決定に関わることを喜ぶ人もいれば、面倒に感じたり、不安に感じたりする人もいます。責任の重い仕事をしたくない、という人もいるでしょう。全員に強要するべきではないでしょうが、意欲のある人が増えるまで時間がかかることもあります。

積極的に関わりたい人にとっても、経験を積んだり知識を習得したりするために、時間をかけて進めていくことが課題となります。例えば、私の研修の専門分野と絡めて言うと、財務や会計の知識は、階層型組織では経営陣と経理部門などが詳しく把握していればよいですが、自律分散型組織では大多数の社員が一定の知識を持っているべきです。

このようにガバナンスの構造をクリアしたとしても、「人」の面の課題が大きく存在します。組織構造の変革は、人が変わるスピードに合わせて進めていく必要があります。

ここまで見てくると、自律分散型組織への移行は容易でないどころか、必然性もないと感じる方もいるでしょう。あえて反論するつもりはありません。すべての組織が自律分散型になるべきだとは思いません。今の階層型組織やその背景にある社会のしくみに「ひずみ」を感じるかどうかです。ひずみを解消したい経営者の力になりたいと私は考えています。

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朝尾 直太

株式会社オープンパワー 代表取締役 / 一般社団法人自然(じねん)経営研究会 理事

大手企業勤務を経て、30歳直前に友人の設立したベンチャー企業の創業に参加。そこで、小さいながらも経営全体を見て意思決定する世界を知り、社会で大きなウェイトを占める「会社組織」が自律分散型になることが、民主的な社会の実現につながると感じました。 独立前から現在に至る20年余り、主に企業向けの研修をしてきました。組織変革ではなく人材の経営リテラシーの養成です。自律分散型になると全員が経営視点をもち、当事者意識を持って関わるようになります。その前提として、誰もが会社の財務状態を理解できるのが望ましい。私自身はそう位置づけて、経営シミュレーションや財務・管理会計分野の研修に取り組んでいます。
近年、ティール組織として知られるダイヤモンドメディア社を創業した武井浩三氏と出会ったことをきっかけに、自律分散型経営組織(自然(じねん)経営)を広める活動に力を入れています。

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