自己理解を深め、退職後の人生を見通す研修を提供し、ミドル・シニア層の自律を支援

中外製薬株式会社様

中外製薬株式会社様

中外製薬株式会社様
人事部 タレントマネジメントグループ
山田 雅之様
人事部 エンプロイーサポートグループ
山本 秀一様、黒丸 修様、山本 由佳様

中外製薬株式会社では、1980年代という早い時期から社員のキャリア形成に取り組み、現在では20代、30代、40代、50代、60代の各年代に合わせたキャリア研修を実施しています(図1)。2022年には、これまで54歳の社員を対象に行ってきた「キャリアデザイン54」を改変して、新たに50歳の社員を対象にした「キャリアデザイン50」をスタートさせました。同社のミドル・シニア層に向けたキャリア支援プログラムについて、「キャリアデザイン50」の立ち上げに携わった皆さまに伺いました。

CONTENTS

  1. 50代社員に2つのキャリア研修を用意した理由
  2. 「キャリアデザイン50」で工夫した点、気を使った点
  3. 「キャリアデザイン50」実施後の変化
  4. 今後の取り組みとして考えていること

50代社員に2つのキャリア研修を用意した理由

― 御社では54歳対象の「キャリアデザイン54」に加え、2022年から50歳対象の「キャリアデザイン50」をスタートされています。50代に2つのキャリア研修を設けられているのはなぜでしょうか?

山本(由)氏:54歳を迎える社員を対象とした「キャリアデザイン54」(以下CD54)は、各年代向けに用意しているキャリアデザイン研修のひとつとして、以前から実施してきたものです。当社では55歳時に、そのまま社員として60歳の定年を迎えるか、シニア社員として65歳を上限として働くか、または社外へキャリアチェンジをして活躍するかといった大きな選択が必要になります。そのため54歳でその先のキャリアを考えてもらう研修を用意していたのですが、受講者から「大事な選択をするうえで、もっと早い段階から自分のキャリアと向き合いたい」との声が出ていて、昨年度から「キャリアデザイン50」(以下CD50)を新たに設けました。

図1. キャリアデザインプログラムの実施タイミング

キャリアデザインプログラムの実施タイミング

黒丸氏:50代はポストオフなどもあり、喪失感をもったり、今後の自分を考え始めたりします。自社の意識調査でも、55歳で働きがいの拠り所がガラリと変わる傾向がありましたので、私たちとしても、早くから心の準備をしてもらう必要性を感じていました。

山本(秀)氏:当社では、2030年に向けた成長戦略として「TOP I 2030」を掲げており、ヘルスケア産業のトップイノベーターを目指して高い目標を置いて変革を進めています。そこで描かれている目指す姿に到達するには、自分たちも変革を起こしていかなければなりません。ミドル・シニア世代は、一般的には変化を受け入れることがなかなか難しい世代とされていますが、会社が進める変革と自己の変革をシンクロさせることで変化を受け入れ、主体的に動けるミドル・シニア層になって欲しいという思いを持っています。

山本 秀一様
山本 秀一様

「キャリアデザイン50」で工夫した点、気を使った点

― 「CD50」と「CD54」では、具体的にどのような違いがあるのですか?

山田氏:50代のキャリアデザイン研修で考えてもらいたい観点としては「環境変化」「自己理解」「キャリアデザイン」「マネープラン」の4つがあり、「CD50」では「環境変化」「自己理解」「キャリアデザイン」の3つをテーマにしています。社内外の環境変化を理解して、自分自身の能力や経験を活かしどう組織や社会に貢献するか、また将来の変化に対応するために知識やスキルをアップデートし、そこからどうキャリアを築いていくかを考えていくことを目的としています。その後、数年間考えを深めて「CD54」では前述した55歳時の働き方の選択を念頭におき、今後のキャリアパス・制度理解などについて情報提供し、マネープランについても検討することで、自らのキャリアをデザインしてもらうようにしています。

山本(由)氏:制度の理解やマネープランは、55歳での選択の直前のほうがよいですし、環境変化や自己理解の部分については、早い年齢から考えてもらうほうが、次のキャリアも考えていきやすくなります。

― 自分事としてキャリアを深く考えてもらえるように分けたということですね。研修を実施するにあたって工夫された点や気を遣われた点はありますか?

山本(秀)氏:会社が変革を進める上でミドル・シニア層のキャリア自律は極めて重要な経営アジェンダであることから、キャリアデザイン研修のうち、「CD50」は全員参加の研修に位置付けました。全員参加とする以上、多様な受講者一人ひとりが自分事として考えられるようなシナリオと場づくりが求められます。「CD50」では、自己理解に加えて、将来起こり得るシナリオをもとに自分のキャリアを具体的に考えてもらうことが目的ですので、受講者が向き合うケース内容を当社の状況に合わせて大幅にこれまでの「CD54」のケースから変更しました。また、シナリオの中には役職退任という変化を入れる必要があることから、マネジャー経験者と未経験者に分けて実施することとしました。

山本(由)氏:具体的にはマネジャー推奨枠を用意して、どちらか自由に選べるようにしています。内面に深く入っていく研修内容ですし、グループワークを多く入れましたので、置かれている環境が近い社員でグループ化した方が話し合いも進みやすいですので。そういう意味では、環境が近いながらも、部署や役職が同質化しないようにグループ分けするなど、メンバーの組み合わせにはとても気を遣いました。

黒丸氏:研修を考えていく際にキーワードとしたのは「健全な危機意識をもってもらう」ということです。危機意識をもってもらいたいけれど、煽り過ぎてもいけない。それから危機感のまま終わらせず、そこから「自分を取り巻く環境や会社はこんなに変化していきますよ」と知ってもらい、ご自身のキャリア構築へとつなげていくことを目指していたので、健全な危機感をもってもらうためのさじ加減は難しかったですね。メンバーでとことん議論しました。

山本(由)氏:実は、名称通り50歳だけを対象とした「CD50」が実施できるのは再来年からで、現在は以前の対象であった54歳までの年代をフォローしていく過渡期にあります。昨年度の「CD50」では、53歳、54歳を迎える社員を対象に実施しました。この年代は自己理解を深めることを目的に実施している40代研修の対象ではなかったため、自己理解があまり進んでいない方も多く、自分の価値に気づいていただくため丁寧に研修を作る必要がありました。

山本 由佳様
山本 由佳様

「キャリアデザイン50」実施後の変化

― 受講された方の反応や変化はいかがでしょうか?

山田氏:研修直後のアンケートでは、「参加者同士のディスカッションを通して、環境を理解したうえで多様な考え方・働き方や、自分はどうありたいかなどを考える重要な機会になった」といった声がとても多かったですね。

山田 雅之様
山田 雅之様

黒丸氏:将来のキャリアに関する選択肢を考える際、たとえば「地元に帰るといった選択は自分にはないな」など、実現可能性が薄い選択肢も一旦テーブルに置いて考えたことで、「おぼろげながらも行きたい道がはっきりした」と言っていた方もいました。こういう道もある、あるいはこういう道は自分の選択としてはないというように、意思をもって考えることができたとの声もあります。会社のなかだけでキャリアを考えるのではなく、その先の人生の部分までスコープに入れて、考えてもらう研修にしましたので、広い視野で考えてもらうことができたと思います。

山本(由)氏:今後の選択肢に関する相談をはじめ、研修を受けた方からのキャリア相談が増えました。もやもやしたものを抱えているにもかかわらず、それを相談できない人がミドル・シニア層には多いので、「もやもやのままでいいですからキャリア相談に来てください」と言えるきっかけがつくれたのも研修の成果かなと感じています。

今後の取り組みとして考えていること

― 今後取り組んでいきたいこと、考えていらっしゃることはありますか?

山本(秀)氏:環境変化はますます進んでいきます。昨年の研修シナリオもおそらく古くなっているでしょうし、アップデートは毎年していきたいと考えています。また会社も環境変化に合わせ、より自由度、柔軟性を高めた新しい働き方にしていこうと考えているところですので、多様な選択肢から自らの道を自分で決めるという主体性を意識してもらえる研修プログラムづくりが、これからも必要と感じています。

黒丸氏:研修からキャリア相談への接続をどんどん増やしていきたいですね。それからパーソル総研さんが調査結果から導き出した「5つの行動特性(PEDAL)」* を参考に当社でもミドル・シニアの活躍に向けた「5つの行動指針」を定めました。この行動指針を研修と紐づけて、もっと浸透させていきたいと考えています。

黒丸 修様
黒丸 修様

― 活用していただいてありがとうございます。最後になりますが、パーソルグループへの期待などがあればぜひ教えてください。

山本(秀)氏:パーソルグループにはデータや調査が充実しており、エビデンスベースでの研修設計ができたことで受講者にも納得感をもってもらうことができたと思います。私たちもミドル・シニアのキャリアに関する社内意識調査を行っているため、当社のデータと合わせることで、より実践的に研修に活かしていくことができましたし、知見を広げていくことができたとも感じています。豊富なデータとエビデンスに基づく知見で、これからも私たちの活動をサポートしていただければうれしいですね。期待していますし、楽しみにもしています。

*「5つの行動特性(PEDAL)」
ミドル・シニアがジョブ・パフォーマンスを高める上で重要と考えられる行動特性。① まずやってみる(Proactive)、② 仕事を意味づける(Explore)、③ 年下とうまくやる(Diversity)、 ④ 居場所をつくる(Associate)、 ⑤ 学びを活かす(Learn)の5つがある。

インタビュー後記

パーソル総合研究所 組織力強化事業本部 キャリア開発部 キャリア開発グループ マネジャー 赤座 佳子
パーソル総合研究所
組織力強化事業本部 キャリア開発部
キャリア開発グループ マネジャー
赤座 佳子

中外製薬様株式会社様の人事部の皆様の取り組みには、深く感銘を受けました。もともと54歳向けに「キャリアデザイン54」という研修がありましたが、受講者から「54歳では遅い」「もっと早く知りたかった」という声を受け、新たに「キャリアデザイン50」を始めたとのこと。社員の生き方、働き方に真剣に考え、高い意識を持つ素晴らしい組織だと感じました。

研修の内容を決定する過程では、毎回10名程度の関係者が出席し、研修の効果と方向性について深く検討していました。この姿勢から、企画者側の研修に対する深い想いと真剣な取り組みが感じられました。

そんな想いを「受講者の方々にも届けたい」「40代、50代の方々にまだまだ躍進いただきたい」「はたらいて笑っていただきたい」と心から思い、その実現のためにお手伝いさせていただきました。チーム中外の一員として、お手伝いできたことを心より感謝しております。昨年よりも今年、そして今年より来年と中外製薬株式会社様のより多くの皆様と一緒に「はたらいて、笑いたい」と考えています。

中外製薬株式会社様

業種:医薬品
従業員数:約7,771名(連結/2022年12月31日現在)

https://www.chugai-pharm.co.jp/

人材開発・組織開発

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